FC2ブログ

ギルバート・キャプランの痛快な人生

マーラー/交響曲第2番「復活」
ギルバート・キャプラン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン楽友協会合唱団
ラトーニア・ムーア(ソプラノ)
ナージャ・ミヒャエル(メゾソプラノ)
2002年録音

IMG_0003_R.jpg

ギルバート・キャプランは、アメリカの経済誌「インスティテューショナル・インベスター」の創刊者として、実業の世界で成功を収めた人物で、専門的な音楽教育を受けたことはないとされる。

キャプランは若い頃、レオポルド・ストコフスキーが指揮するマーラーの交響曲第2番「復活」を聴いていたく感動し、自らの手で「復活」を指揮したいという、いささか無謀な望みを抱く。
実業家として成功したキャプランは、ゲオルク・ショルティに指揮法を学び、自費でオーケストラを雇い、エヴァリー・フィッシャー・ホールでコンサートを行った。
これが評判を呼び、各地のオーケストラに客演し、「復活」1曲だけの指揮者として活動するようになる。
世界の名だたるオーケストラを指揮しているほか、日本でも新日本フィルを指揮している。
中国でも指揮を行ったが、それは「中国初演」であるらしい。
1988年には、ロンドン交響楽団を指揮してレコーディングを行った。そのCDは話題性も手伝って、17万5000枚ものセールスを記録した。マーラーのCDとしては史上最高の売り上げだと言われている。


さて以上の話は、単に金持ちが道楽を極めたというだけのエピソードにも思えるが、キャプランの凄さはこのあとにある。


彼は「復活」を指揮するに当たり、あることに気づく。
自分が使う総譜と、オケが使うパート譜に食い違いが数多くあるのである。
楽譜というものは、作曲者が書いた自筆譜をもとに、写譜という形でパート譜が作られるのだが、写譜は人間が行う以上、どうしても書き間違いが伴うのだと思う。
これを改めるには、自筆譜に当たって再校訂するのが一番いい。だがマーラーの自筆譜は世界中に散逸してしまっていた。
そこでキャプランは財力に物を言わせて、世界中から自筆譜を購入し、音楽学者のレナーテ・シュタルク=フォイトの協力を得て校訂を行い、400箇所以上の間違いを訂正し、キャプラン版として完成させる。
キャプラン版校訂の過程で、照会を受けたウィーン・フィルがキャプラン版に興味を持ち、クラリネット奏者のペーター・シュミードルの尽力でここに聴くウィーンフィルとの録音が実現した。


演奏はすでにアマチュアのレベルを遥かに超えているだけではなく、間違いなく第一級の演奏である。
各楽器のバランスなど、細かく聴くと普段聴く音とは若干違うようにも感じるが、それは些細なことである。
「復活」だけなら誰にも負けない。そういう自信が溢れている。バーンスタインやアバドなどに伍して堂々と太刀打ち出来る名演と言っても過言ではない。
名盤と言って差し支えないと思う。


ところで、ここまで出来るとキャプランは他の曲も、と思わなかったのだろうか。
大抵の人はそこから勘違いが始まるのだが、キャプランはそれをしなかったのだ。そこが偉いと思う。
欧米の金持ちには、時々こういう粋な金の使い方をする人がいてうらやましい。
我々にはキャプランの真似は出来ないが、その精神だけは見習いたいと思う。
関連記事

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

papageno620

Author:papageno620
FC2ブログへようこそ!

最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
最新コメント
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
フリーエリア