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球の表面積にまつわる話

数学の魔術師たち
木村俊一著
角川ソフィア文庫



一般向けに書かれた数学の本。
数式よりも、物語やエピソードが中心で、読みやすい内容である。
著者は東大で数学を学び、現在は広島大学で教授を務める数学者。
この本の中に興味深い一節があったので紹介する。

ある時著者は、積分の授業の準備のためにある計算をしていた。
半径Rの球を任意の巾hで切った場合、その表面積を求める問題である。




便宜的に横から見た図を書いたが、右の図のように球の一部をスライスしたものと考える。
このいびつな帯のような部分の表面積は
 2πRh
で表される。
どのような巾でスライスしても表面積はその巾に比例する。極めてエレガントな計算結果だ。
球全体の高さは2Rであるから、h=2Rとすると
 2πR・2R=4πR^2
で、球の表面積になる。
ただ、球の表面積は公式として覚えているだけなので、これだけでは納得できない。




このことは、例えば球をn等分(図では10等分)すると、表面積は全て同じという結果になる。


著者はその結果に驚き、同僚2人(もちろん数学者)に話したが、同僚もその事実を知らず、不思議な思いが解けなかったという。
「興味深い」と言ったのはその計算結果ではなく、数学の専門家が知らなかったということだ。


話は変わるが、私は建築の設計と言う仕事をしている。
設計という仕事の中には、古いものを解体するということも含まれる。
ある時、鉄板で出来た構造物の表面積を計算した。
有り体に言えば、スクラップにしたらいくらになるか、という極めて実際的な話である。
その構造物は、円筒や円錐の一部、球の一部などから出来ていたので、それずれの部分に分けて表面積を計算した。
その時にこの「球を任意の巾でスライスした形」が出てきたのである。

それを考えた時に、ひとつの法則(?)を思い出した。




半径Rの球の表面期は、その球を包含する円筒の表面積と同じである。
アルキメデスが発見したと言われている。
(図では円柱と書いたが、もちろん底面積は含まない)

円筒の周囲は2πR
円筒の高さは2R であるから、表面積は
 2πR・2R=4πR^2

自分は、球と円筒の表面積が同じならば、冒頭の問題
 巾hでスライスした部分の表面積は2πRhになる
というのは自明であると考えただけである。
実際的な問題だったので、数学の証明が必要だったわけではない。

ただ、このことから逆に球の表面積が4πR^2であることを感覚的に求めて見よう。
実際の計算には積分が必要になるので、あくまでも感覚的な計算だ。




半径Rの球と円筒を任意の巾hでスライスした場合、その表面積が同じであることを示す。




球を微小な巾dでスライスする。
「微小」ということは「限りなくゼロに近い」という意味であることに注意。
 r=Rcosθ
 d=ccosθ → c=d/cosθ(dは微小な部分なので円弧は直線と見做せるから)
であるから、帯状の部分の表面積は
 2πrc=2π・Rcosθ・d/cosθ=2πRd
となり、円筒をスライスした分の面積に等しい。
円筒の表面積は、これを全体の高さ2R分足し合わせて
 2πR・2R=4πR^2

従って球の表面積は
 4πR^2
が成り立つ。

感覚的にはこれでいいのではないかと思うのだが、エレガントな説明を求めた冒頭の本の著者はどう考えたのだろうか。
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