FC2ブログ

ブルックナー/交響曲第7番(朝比奈隆/大阪フィル)フローリアンのライヴ


ブルックナー/交響曲第7番
朝比奈隆/大阪フィル
ザンクト・フローリアン修道院、マルモア・ザール(オーストリア、リンツ)

ブルックナー入門は、大抵4番であることが多い。
続いて7番、8番、9番、5番、3番あたりの順番になるだろうか。
初期の1番、2番はともかく、6番は若干印象が薄い。
7番は傑作ではあるが、構成が弱いと言われることが多く、8番、9番の完成度の高さ(9番は未完成であるにもかかわらず)には及ばないと思う。


1975年、朝比奈隆と大阪フィルハーモニー交響楽団は初めてヨーロッパツアーを行った。
その際にザンクト・フローリアン修道院で行われた伝説的なライヴ録音である。
ジャンジャンによる朝比奈のブルックナー交響曲全集の特典として発売されたもので、その後ビクターから2枚組で発売されたものである。
通常7番はLP1枚に収まるのだが、2枚にゆったりと入っていて、音質的には最良である。
現在もCDで入手可能。

言うまでもなく、ザンクト・フローリアン修道院は、ブルックナーがそこで多くの時間を過ごし、今もその地下に眠っているところで、ブルックナー音楽の聖地のような場所である。
そんな場所で日本の地方オケのコンサートが行われた経緯はよくわからないが、ここでブルックナー作品の演奏が行われたのは初めてのことだったようだ。
その後、色々な指揮者がここで演奏を行っており、この大フィルの演奏がその嚆矢と言えるものである。 
以前取り上げたブーレーズの8番もここで録音された。

大理石で囲まれた美しいマルモア・ザールは、残響時間7秒という極めて特殊な音響特性を持っている。
その特性に十分配慮したものだろう、金管を抑え気味に、弦の響きを中心に、極めてゆったりとしたテンポで音楽は進む。
舞台が狭いこともあって、若干人数を絞った編成であるらしい。

ちなみに残響時間の定義は、音圧レベルが60デシベル下がるまでの時間を言う。
音のエネルギーで言うと百万分の一になるまでの時間。(3デシベルで半分なので)
一般的な音楽ホールでは2秒前後を目安に設計されることが多いので、7秒と言うのは相当に長い数字であると言える。

とにかくエピソードがふんだんにある録音だ。
午後4時から行われた演奏。第2楽章終了後、フローリアンの5時の鐘が偶然に鳴った。
このレコードでは3面の冒頭に入っている。
鐘が鳴り終わるのを待って、朝比奈は第3楽章のタクトを下した。
解説の宇野功芳御大は「これを偶然の出来事と笑うものに、芸術の心は決して理解できないだろう」と書いている。御大の文章としてはなかなか名言だ。

演奏終了後、拍手が6分間続いたが、全て収録されている。

第1楽章終了後に拍手が起こり、鳥の声が聞こえたとされるが、残念ながらそれはカットされている。

演奏はハース版で行われた。
当日聴きに来たレオポルド・ノヴァークが楽屋を訪れて絶賛した。朝比奈はノヴァーク版を使わなかったことを詫びたが、ノヴァークは「楽譜は学者の仕事だから、そんなことは関係ない」と言った。これ、なかなかの名言だ。

ネット上の評価を見ると、大フィルの技量の未熟さを疑問視するもの、逆に深い精神性というような曖昧な表現で神格化するものなどさまざまだが、自分としてはあまりに極端な意見には賛同しない。
要は音楽に対する深い共感が感じられるかどうかだと思う。
虚心坦懐に耳を傾ければ、やはり稀有の演奏と言えるのではないだろうか。

関連記事

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

papageno620

Author:papageno620
FC2ブログへようこそ!

最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
最新コメント
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
フリーエリア