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著作権の保護期間延長で誰が得するのか

TPP交渉が大筋合意となった。
これによるメリット、デメリットについては色々言われているが、正直自分としてはその意味合いは全くわからない。
ただ、農業分野や工業製品の関税などの問題などに隠れて、マスコミがほとんど報じないのだが、一番大きな問題は「著作権保護期間の延長問題」ではないかと思っている。

著作権の保護期間は、日本では50年だが、今回の合意によってアメリカの主張通り70年に延長されることが確実になった。
音楽の場合で言うと、著作権は作曲者の死後50年で消滅する。
例えばモーツァルトやベートーヴェンは死後50年をとっくに過ぎているため、作曲の著作権は当然消滅している。
その作品を録音したレコードは、発売後(録音後ではない)50年で著作権は消滅する。(著作隣接権)
これをパブリックドメイン(公有財産)と言う。「50年も経ったらみんなのもの」という考え方。
それを70年に延長するという悪法が遠からず成立することになるのだろう。
音楽(に限ったことではないが)を文化としてではなく、金儲けの手段としか考えない連中が勝利したことに対しては、大いなる皮肉を以って「おめでとう」と申し上げる。

パブリックドメイン(PD)となった録音をFLACで配信しているウェブサイトがある。
http://www.yung.jp/

現在、概ね1963年ごろまでの録音が多くPDとなっている。
実を言うと、2011年ごろからそのサイトからせっせとダウンロードすることが日課となっているのである。

1960年前後の録音と言うと、古いと思われるかも知れない。
だがクラシック音楽の世界では、ステレオ録音が一般的になった1957年ごろから1960年代というのは、名演奏家が綺羅星のごとく活躍した黄金時代なのである。
毎年多くの録音がPDとなり、自由に頒布されることになる。
ここ数年は、クラシック音楽愛好家にとって、言わば夢のような時代だった。
惜しむらくは、あと7年ぐらいこの状況が続けば1970年ごろまでの録音が全てPDになったのだが。

今、おそらく今年PDとなったアンタル・ドラティ指揮ロンドン交響楽団のブラームス/交響曲第3番を聴きながらこれを書いている。
ドラティのブラームスというのはピンと来なかったし、ブラームスの3番は個人的にちょっと苦手でもあったのだが、この演奏、超絶的な録音も含めて、目から鱗の新鮮な体験を味わった。
こんなに魅力的な音楽だったとは。
40年も聴いて来たのに、まだこんなことがあるのである。これだから音楽は底知れないほどに面白い。
そういう体験を多くの人にしてほしいのである。
実際、毎年多くの名演がPDとなるこの数年間は、夢のように過ぎて言った。
だがそれも最早風前の灯かと思う。

著作権保護期間を70年に延長するということは、これら人類共有の遺産を今後20年間埋もれさせるだけで、誰の利益にもならないことは明らかである。
「50年も経ったらみんなのもの」という考え方のどこが悪いのだろうか。
この愚かな延長で誰が得をするのか、よく考えてほしい問題である。

ひとつの救いは、これまでにPDとなった録音に再び著作権が生じることはないだろうということである。(法の不遡及の原則)
ちなみにかのウェブサイトでは、今までにPDとなった録音がまだ膨大に残っているので、ウェブサイトの運営には何の不都合もないだろうということだ。
それらの名演奏を渉猟しているうちに20年経ってしまった、ということになるかも知れない。
そうなったとして、それは我々の負けではない。少なくとも「音楽を金儲けの手段としか考えない連中」には負けないつもりであると申し上げておく。

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