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東京国立博物館・法隆寺宝物館(1999年竣工)

東京国立博物館 法隆寺宝物館
東京都台東区
設計 谷口吉生

東京国立博物館には明確な軸線がある。
敷地に入ると前庭の中央には池があり、池を囲む形で、正面に本館、右に東洋館、左に表慶館が整然と配置されている。
その軸線の先には上野公園の大噴水池があり、その線を更に延長すると皇居に至る。
もともと上野の山という場所は、皇居(江戸城)の鬼門に当たるので、そこに寛永寺を建立して守りとしたと言われている。(谷口吉生のインタビュー記事-新建築2001年5月号)
東京国立博物館の配置は、その歴史的な軸線を重んじていることがよくわかる。
法隆寺宝物館の設計に当って、設計者はその軸線を崩すことがないようにしたいと考え、表慶館の奥を提案したらしい。(当初発注者から示された場所がどこであったかは定かではない)そして実際にその場所に建てられた。
正面を入っても、奥にチラリと見えるだけの控えめな配置である。
そのせいか、訪れる人が少ないのは残念だが、この建物の前に立つと、どこか厳かな気持ちがこみ上げてくる。




建物の構成は、いつものように明快かつダイナミックなものである。
展示室を構成する単純な石張りの箱に、透明なガラスボックスのエントランスホールが、少し中心をずらして配置されている。




ガラスのボックスは、軽快な門型の架構でふわりと覆われている。
門型の架構は、丸亀の猪熊弦一郎現代美術館や、つくばカピオでも採用された手法だが、法隆寺宝物館のものはアルミハニカムパネルを用いて極端に薄く、またそれを支える柱は鉛直力のみを支える、これまた極細の柱である。

実は今回特にここを訪れたのには理由がある。
今までのレンズの広角側が足りなかったのだが、最近、広角側15mmのレンズが使えるようになったので、この写真が撮れるようになったからである。




ガラスのカーテンウォールは、葛西臨海公園展望広場と同様、鉄骨の無垢材(100mm×225mm)で支持されている。
細かい縦格子(巾30mm、@180mm)が、さりげなく“和”を表現しているところがさすがと思う。


実は法隆寺宝物館という建物は、これが2代目である。
1878年(明治11年)に法隆寺から皇室に献納された「法隆寺献納宝物」300件あまりは、奈良の正倉院宝物と双璧をなすとされる。
これを保存展示するため、1964年に開館された初代の宝物館は、毎週木曜日のみの開館で、雨天は観覧中止という、極めて不便なものであったが、1999年に現在の建物となってからは、基本的に常時展示されている。(織物等、劣化の懸念があるものは不定期公開)




1階の展示室2
6世紀から8世紀の金銅仏を展示する。
64点あり、ほぼ全てが重要文化財という凄いものである。




2階の展示室5
金工作品を展示する。
57点のうち、7点が国宝。その他の大部分が重要文化財。圧倒的である。

右の3つのガラスケースに国宝が収められている。




中央にあるのが、法隆寺宝物館の代表的な宝、「竜首水瓶」

・・・・・・

東京国立博物館は、常設展示については600円で全ての館が見学できる。
法隆寺宝物館を見ないのははっきり言って勿体ないと思う。



その他の館について



■本館(重要文化財)
1938年開館
設計は渡辺仁。銀座の和光(服部時計店)の設計でも知られる。
いわゆる帝冠様式(鉄筋コンクリートの近代建築に、和風の瓦屋根を載せた、和洋折衷様式)の代表作とされる。



■東洋館
向かって右手にある。
1968年開館。
設計は谷口吉生の父、谷口吉郎。
今年リニューアルオープンした。



■表慶館(重要文化財)
本館に向かって左手にある。現在は休館中。
1909年、皇太子嘉仁親王(後の大正天皇)の成婚を祝して建設された。
設計は、赤坂の迎賓館でも知られる片山東熊。


さて次は安藤忠雄による、東京都内で数少ない公共建築、国立国会図書館・国際子ども図書館
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