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葛西臨海公園展望広場レストハウス(1995年竣工)

撮影 2013.1.12
東京都江戸川区

谷口吉生という人は、日本の建築家の中でも唯一無二の、特別の存在である。
その作品は建築雑誌の表紙を飾る人だが、メディアに登場することはほとんどない。
自ら語ることはあまりしない人で、作品を雑誌に載せることすら積極的でないように思う。
コンペにも参加しない。
海外での仕事も原則としてしない。
唯一、ニューヨーク現代美術館のコンペに請われて参加し、当選した。
この世界も御多分に漏れず、競争にさらされている。
「オレが、オレが」という風潮にどうしてもなりがちだが、谷口の姿勢は一線を画していて、作品第一主義である。

そう言うと孤高の建築家みたいな感じになってしまうが、実際はそうではない。
父は文化勲章を受章した建築家、谷口吉郎。
本人は慶応大学で機械工学を専攻した。(これが唯一変わった経歴)
ハーバード大学で建築を学び、東京大学丹下研究室に所属、その後独立。
1979年、資生堂アートハウスで日本建築学会賞受賞。
その後の活躍は言うに及ばず、建築家としての経歴は華麗である。

その作風は、ストイックなまでにシンプルだが、プロポーション、ディテール、材料の吟味に至るまで、徹底的に考え抜かれたものである。
見た目の静謐さとは裏腹に、驚愕するほどのエキサイティングな技術が駆使されているのが谷口建築の神髄である。

すでに17年経過した建築ではあるが、そんな目で見てみよう。




臨海水族園に向かって行くと、右手が海になる。
その海へのゲートのような位置に建っている。
まず、その透明感に目を奪われる。

建物本体はコンクリートの箱になっていて、その外側をガラスの箱が覆っているような構成である。
問題はこのガラスの箱と屋根をどうやって支えるのかという構造である。


その前に、ここになぜこういう建築が生まれるに至ったかという話。
もともと考えられていたのは、普通の展望台である。
だが谷口はこう考えた。
「ここに普通の展望台を建てても、それほど変わった景色が見られるわけではない。むしろ低層で横長の施設として、多くの人を受け入れた方が良い。」







この建築の最大の特徴である「限りない透明感」は、サッシの方立(縦の部材)と無目(横の部材)がサッシの一部ではなく、構造材として用いられていることで生み出されている。

この方立は120mm*50mmという無垢の鉄骨で、100mm*50mmの無目はこれに溶接されている。
溶接の余盛は特殊なグラインダーで直角を正しく出している。

また、屋根にかかる地震荷重を受けるために、水平ブレースが設置されているが、これも丸鋼にターンバックルなどという安直なものではなく、鋳物を用いてスマートなものになっている。


ところで、展望塔ならば工作物扱いになって耐火構造は必要ないのだが、こういう形になって不特定多数の人が利用する施設ならば耐火構造が必要だと、東京都は指導したらしいのだが、それはそれでもっともな話である。
ただ、サッシの方立ならば主要構造部ではないので耐火でなくてもいいのだが、これを構造部材にしてしまったのだから、当然耐火にしなければいけない。これに耐火被覆を施したらそれこそぶち壊しである。
そこで、当時普及し始めたFR鋼(耐火鋼)を使用することになったのである。

FR鋼でこういう大断面のフラットバーを加工することは非常に困難を要したらしいのだが、そのあたりは構造家の木村俊彦が「新建築1995年10月号」に書いている。







海側から見る。
地下1階部分にレストランなどが入る構成。




大観覧車から
臨海水族園のガラスドームと一対になり、公園全体の中でのスケール感と景観上の特徴を与えている。
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No title

papagenoさん、興味を持って読ませて頂きました。

先に紹介されたガラスドームもそうですが、共にこの場所に似つかわしい建築物に思えます。
開放感に溢れ、精練されたシンプル感がイイですね♪
素人の私の感想ですが・・・^_^☆~

No title

ありがとうございます。
今年は、金沢の鈴木大拙記念館に行きたいと考えてます。
桜の撮影とからめて行きたいと思います。
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