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犯罪/フェルディナント・フォン・シーラッハ


犯罪
フェルディナント・フォン・シーラッハ著 酒寄進一訳
東京創元社 1890円

ちょっと古い話になるが、2012年の本屋大賞に、三浦しをん著「舟を編む」が選ばれた。
この賞は、本が売れない時代、書店員が本当に売りたい本を選ぶ、という趣旨で始まったものである。
その意義は認めるけれども、最近はそれほど意外性がなくなっている感は否めない。
投票になれば、読み巧者の書店員の集まりと言えども、やっぱり「売りたい本」より」「売れる本」に偏ってしまうのは仕方がないことかも知れない。

今年は、特別企画投票「翻訳小説部門」というのがあって、この「犯罪」が選ばれた。
このことに「惜しい」という思いを抱いたのは、この「犯罪」という本が本当は「本屋大賞」に選ばれるべきだったのではなかろうかと思うからである。
本屋大賞が「書店員が本当に売りたい本」という定義であるならば、翻訳小説であっても、またはノンフィクションであってもいいはずだから。
これを選んでいたら、かなり話題になっただろうし、書店員の「見識」に拍手を送りたかったところ。本当に惜しいと思う。
もっとも、200ページちょっとで1890円の値付けを考えても、そもそも売れそうにない本ではある。
特別企画という形でも、この本に何らかの賞を与えたかった、というところに、本屋の矜持を感じ取りたいと思う。


11編からなる短編集。
刑事弁護士である著者の経験に基づく話らしい。
短いセンテンスで淡々と語られる筆致。訳文も素晴らしいと感じさせられる。
専門家ならではの、ドイツの刑事訴訟の実情も興味深い。

個人的には、爽やかな読後感が多くの読者を魅了した「エチオピアの男」と、何とも奇妙なプロットがテンポの良い文章で語られる「棘」の2編が特に印象に残った。

万人にお勧めできる本というのはそんなにない。
ただ、私は本書を読んだあとの数か月間、他の本がつまらなくなり、本を選ぶハードルが高くなってしまったので、本書はお勧めしない。

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