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大植英次/大阪フィルのマーラー


大植英次/大阪フィル
つくば、ノバホール
午前中、筑波山登山、午後からコンサートという過密日程。
というより、15:00からコンサートだからその前に山に行こうと考えたに過ぎない。
文化と自然が共存する「つくば」ならではの楽しみである。

今日のコンサートを楽しみにしていた理由は2つある。
ひとつは、故朝比奈隆が55年もの長きに渡って培ってきた大阪フィルが今、若手指揮者大植(おおうえ)英次を迎えてどういうオーケストラになっているのかという興味。
もうひとつは、その大植英次が今年、日本人として始めてバイロイト音楽祭で「トリスタンとイゾルデ」を振るからである。

曲目はマーラーの交響曲第6番
キャパ1000人ほどのノバホールで、マーラーを聴く機会はほとんど無い。
しかも6番である。
聴く当方としても身構えざるを得ない。

マーラーは病的なほど死を恐れた人物である。
それ故マーラーの音楽は、痛いほどのイメージに彩られている。
これは誰かの受け売りだが、マーラーと死のイメージについて面白い見解がある。
マーラーの作曲人生において、交響曲を系統的に並べてみると、
「第2番」―3曲おいて「第6番」-3曲(大地の歌を含む)おいて「第9番」
という構成になる。
「第2番」は<復活>という副題からも明らかなように、復活を前提にした救いのある死を扱っている。
「第6番」は、復活を前提にしない、救いのない死である。
「第9番」は、最早あきらめの境地に達した、受けいれる死である。

こう考えると、「第6番」は最もマーラーらしいメンタリティに満ちた作品であると言えないだろうか。

5,6,7番の3曲は声楽を用いない、純粋な器楽作品。
指揮者の構成力が物をいう。

7番はちょっと破綻気味の音楽で、私も少々苦手だ。

5番は当代1の人気曲で、演奏される機会も多い。
何しろ、クラシック音楽で最も美しい第4楽章と、それに続く能天気なまでに肯定的な最終楽章は、聴く者を陶酔させずにおかない魔力にあるれているのだ。
それに比べて6番は、とてつもなく暗く重苦しく、ある意味とても地味な音楽である。
これを聴かせるには余程の腕力が必要だろう。
このプログラムを知ったときから、期待と不安でいっぱいだった。

席は4列目の真ん中でB席。
5列目からはA席だから、コストパフォーマンスを考えると最良の席とも言える。
ただし、管楽器は全く見えない。ファゴットの先端だけが見える。

さて、登場した大植英次は、小柄だが颯爽としたなかなかいい男。
若い指揮者らしいダイナミックで大きな身振りである。
余談になるが、若い頃のクナッパーツブッシュやカイルベルトも指揮台から転落したことがあるそうだ。
晩年の小さな動きからは想像できないが、これは年のせいだ。
若い指揮者は元気でなければ。

結論からいうと、全く素晴らしいとしか言いようのない演奏だった。
約85分、完全に集中力を持続した上に、一分の隙も無い構成力には脱帽した。
それでいて、歌わせるところは存分に歌わせる。
マーラーの音楽は、暴力的であるとともに、心が蕩けるように甘美である。
その辺の呼吸がよくわかっていることは当然としても、実際にそのようにオケをドライブすることは並大抵ではない。
この指揮者、バイロイトに招聘されるだけのことはある。
誤解を恐れずに言えば、日本人指揮者として、小澤以上の実力を持った指揮者だろうと私は思う。

それにしても
つくばコンサートとしてはいつものことなのだが、この入りの悪さ。
約1000人のキャパシティだが、半分ぐらいだろうか。
以前、サイモン・ラトルのコンサートに半分ぐらいしか入らず、実行委員会としてもショックを受けたらしいが、一向に変わっていない。
逆にいうと、今日のような優れたコンサートを500人足らずの人間のみが聴いたというのは、ある意味贅沢の極みだろう。
今年8月のつくばエキスプレス開通で、東京からの客が増えることを望みたい。
事実、水戸芸術館のコンサートは東京からの聴衆が多いおかげで、ほぼ満席になる。
チケットが入手しやすいのはいいのだが、あまりにもガラガラなだと、演奏者に対して申し訳ない気がするのだ。
今日の入りに対して、全く手を抜かず、全力で指揮してくれた大植と、破綻無く見事なアンサンブルを聴かせてくれた大阪POに感謝。

最後に笑い話(?)をひとつ
このコンサートが楽しみだったせいか、先日変な夢を見た。
東京芸術大学のオーケストラが、我が町でコンサートをするというのだが、ド素人である私に指揮を依頼してきた。
曲目を尋ねてみるとマーラーの6番だという。
「俺にできるかなあ」と困惑している私。できるわけないじゃないか。

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