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震災10日目

原発事故の報道の中で気になったこと。

「原発」「爆発」「ヒバク」という言葉が飛び交うと、誤解する人も多いのではないか。
”原発”が制御不能になって”核爆発”が起きるのではないか。それによって一般市民が”被爆”するのではないか、と心配している人がいれば、それは確かにパニックになるかも知れない。
今のところ実際に起きているのは”水素爆発”である。水素は激しく酸素と反応するので非常に危険であることはよく知られている。昔のツェッペリン飛行船「ヒンデンブルク」の爆発映像を見たことがある人はそれを思い出して欲しい。
「ヒバク」は”被曝”であって”被爆”ではない。「さらされる」という文字である。
もちろん、放射線に”さらされる”のはいいことではないが。。。
これは常用漢字にないせいか、TV画面でも「被ばく」などという交ぜ書きが行われていて、これは非常によくない傾向だと思う。
このあたりのこと、TVでもしっかり説明した方がいいと思うのだが。

・・・・・・

私は基本的に原発には反対だった。
理由は、原発という巨大技術には根本的に2つの欠陥があるからである。
ひとつは、放射性廃棄物の処分方法が確立されていないことである。
よく、トイレのないマンションに例えられてきた。
「このマンションにはトイレがないのですが、そのうち出来るでしょう」と言われてそのマンションを買う人がいるだろうか。
長期的には地中深くに埋めることになってはいるが、日本のように地殻変動が激しい国でそんなことが可能かどうか。
最も毒性の強い生成物、プルトニウム239で考えて見よう。

今福島で問題となっている放射性物質のひとつ、セシウム137の半減期は約30年である。これは長い部類に属する。放射性ヨウ素の場合、同位体によって異なるが、数時間とか8日というオーダーである。
一方、プルトニウム239の半減期は極めて長く、約24000年である。
つまり、24000年で半分が崩壊するということ。
48000年で1/4
72000年で1/8
96000年でやっと1/16になる。
数万年後の世界というのは全く想像できないけれど、そういう長い期間に渡って温度管理をしながら貯蔵するということが果たして現実的なことなのだろうか。


もうひとつは、原発には基本的に破局的なアクシデントは許されないということである。
航空機事故で亡くなる人の数は、1年間に千数百人ほどである。
これはこれで大変な数だし、ひとりひとりの命はかけがえのないものである。酷なようだが、全体としては一応許容されていると考えられる。
毎日のように旅客機が墜落するようでは飛行機に乗る人はいなくなるだろうし、航空産業は成り立たないだろう。
現在の確率では、事故は怖いけれどその確率は低いだろうと考えて皆乗っているのである。

原発に関して言えば、破局的事故の確率はゼロにしなければならないのである。「限りなくゼロに近づける」ではなく、本当の意味でゼロにしなければならない。日本でチェルノブイリのような事故が起きたら、本当に破滅なのである。
残念ながら、完璧というのはあり得ない。そこが原発の持つ根本的な矛盾であると思う。

絶対にあってはならない事故が、過去に2度起きた。
世界で最も進んだ超大国で起きたということは象徴的である。3番目が日本ではないという保証は「どこにもなかったが、まさかこんな形で本当になるとは。
参考までに、過去2つの事例を検証して見よう。


■スリーマイル事故
1979年3月28日
アメリカ、ペンシルベニア州スリーマイル島

初めは小さなトラブルから、蒸気発生器への給水が絶たれたことが大事故の発端になった。
蒸気発生器の蒸気は、タービンを廻した後に冷却されて水に戻り、蒸気発生器に送り返される。その仕組は福島の原発でも同様である。
スリーマイルでは、建設コストを下げる目的で配管に汎用品が使われていたため、配管の連結がうまくいかず、トラブルが頻発していた。
この日、目詰まりを起こしたバルブの操作に運転員が格闘している最中、突如バルブが閉じ、蒸気発生器への給水が止まってしまった。
緊急炉心冷却装置(ECCS)が作動したにもかかわらず、計器の表示が不適切であったために誤作動と勘違いした運転員がECCSを止めてしまった。
そのため原子炉の冷却水が失われて空焚き状態となり、炉心溶融に至った。

※追記
スリーマイルは加圧水型、福島は沸騰水型で、仕組みがちょっと違った。


■チェルノブイリ事故
1986年4月26日
旧ソ連、ウクライナ共和国

運転中の原子炉が暴走、爆発し、砕けた燃料と水が反応して水蒸気爆発を繰り返し、周辺に大量の放射性物質を撒き散らした。その量は広島型原爆の600倍ほどと言われている。
この事故の場合、出力の急増は1秒足らずの間に起こり、環境に放射性物質が撒き散らされるまでにかかった時間は数10秒程度と言われている。
核反応を止めるための制御棒も設計ミスのために役に立たず、緊急炉心冷却装置(ECCS)のスイッチは、あろうことか切られていた。


このように見ると、今回の事故はスリーマイル事故によく似ているところもあり、そうでもないところもあるが、少なくともチェルノブイリ事故とは全く違う。
少なくとも福島では、原子炉自体は安全に停止している。
3号機、4号機の核燃料貯蔵プールへの注水が成功すれば、臨界は避けられる可能性は高いと思うので、「チェルノブイリ並み」などという事態にはならないと思う。


2つの事故の教訓はいろいろあるだろうし、今回の福島事故の教訓も今後検証されなくてはならない。
今日の時点では、私自身はまだ楽観的に見ており、1~3号機の炉心冷却装置が明日以降正常に作動する方向に展開ことを信じている。

・・・・・・

メディアでも「想定外」という言葉が批判を浴びている。「そんなことは想定しろ」ということなのだろう。
想定される津波の高さにしても、どの程度まで想定すべきかということは極めて難しい問題だが、今回の津波の高さを考えると、想定が甘かったと言われても仕方がないだろう。
上の2つの事故を考えても、ECCSが作動しない、電源が全て失われる、という事態は絶対にあってはならないことで、実際にはそこまで想定すべきであっただろう。これは今後の検証が必要な事項である。

・・・・・・

あり得ない事故、というのも過去に何度も起きている。
典型的な事故は、東海村JCO臨界事故である。

■東海村JCO臨界事故
1999年9月30日
茨城県東海村

高速増殖実験炉「常陽」の燃料を加工する施設で起きた事故である。
この時は、作業員が18.8%という高い濃縮度の硝酸ウラニル溶液を沈殿槽に移送していた。
これは本来特殊な器具を用いて行うものだが、正規のマニュアルを無視し、ステンレスのバケツを用いて、手作業で行っていたところ、青い光を発してガンマ線が発生、臨界状態(核分裂が連鎖的に起こること)となった。
全く遮蔽されていない、裸の状態の原子炉が出現したような状態と形容される。

ここで言う「青い光」の正体はチェレンコフ光と言う。
原子炉の資料映像で、水中が青く光っている光景がよく見られるが、あの光である。
「光の速度を超える事はできない」というのは特殊相対性理論の柱のひとつだが、正確に言うと「真空中の光の速度を超える事はできない」というのが正しい。
空気中、あるいは水中での光速度はそれより小さいので、水中で中性子線の速度が「水中での光速度」を超えることがあり得る。その時に青いチェレンコフ光が出る。
「青い光を見た」という証言は、臨界が起きたことを示唆しており、この言葉を聞いた時、私は椅子から転げ落ちそうになった。


余談
岐阜県神岡の実験施設「カミオカンデ」で行われた実験は、光速で飛来する太陽ニュートリノが、ごく稀に水分子をはじき飛ばした時に、水分子が一瞬「水中での光速度」を超える時に発するチェレンコフ光を検知することが目的だった。
もちろん、目に見えるような光ではない。
周囲に張り巡らされているのは、光子1個から検出できるという、世界一の光電管である。製造したのは浜松ホトニクスという会社である。


臨界は20時間続き、当事者2人は推定10~20シーベルトの放射線を浴びて死亡した。
周辺住民の被曝は600人以上に及び、最大の人は25ミリシーベルトだったと言う。

この事故で核分裂を起こしたウランの量はわずかに1mgだった。
運転中の原子炉が暴走したチェルノブイリの事故がどれほど凄まじかったか、このあたりから想像出来る。

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書きたいことが多すぎてとりとめのない記事になってしまった。
明日は3号機の抱える根本的な問題について考えて見る。

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