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名盤コレクション101 ヘンデル/合奏協奏曲OP6他(ピノック/イングリッシュ・コンサート)

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ヘンデル/合奏協奏曲OP6他

合奏協奏曲第1番ト長調HWV319
合奏協奏曲第2番ヘ長調HWV320
合奏協奏曲第3番ホ短調HWV321
合奏協奏曲第4番イ短調HWV322
合奏協奏曲第5番ニ長調HWV323
合奏協奏曲第6番ト短調HWV324
合奏協奏曲第7番変ロ長調HWV325
合奏協奏曲第8番ハ短調HWV326
合奏協奏曲第9番ヘ長調HWV327
合奏協奏曲第10番ニ短調HWV328
合奏協奏曲第11番イ長調HWV329
合奏協奏曲第12番ロ短調HWV330
 以上、1981年1、7月、1982年2月録音

合奏協奏曲ハ長調HWV318「アレクサンダーの饗宴」
 1984年6、9月録音

2つの合奏体のための協奏曲第2番ヘ長調HWV333
2つの合奏体のための協奏曲第3番ヘ長調HWV334
 以上、1984年8月録音

トレヴァー・ピノック(指揮とチェンバロ)/イングリッシュ・コンサート
サイモン・スタンデイジ、エリザベス・ウィルコック(ヴァイオリン)
アントニー・プリース(チェロ)


バッハとヘンデルはともに1685年生まれだが、その4年前に生まれたのがテレマンである。
この時代の3大作曲家と言える3人だが、生前の評価は
 テレマン>ヘンデル>バッハ
であり、今の評価とは逆である。
テレマンはクラシックの作曲家では最も多作で、4000曲もの作品を残したらしいが、作品数が余りに多く、その全貌は全くわからない。
バッハは同時代人には時代遅れの作曲家とみなされたが、シューマンやメンデルスゾーンによって再評価され、その真価が知られるようになって評価が逆転した。
ヘンデルは存命中も死後も一貫して高評価を受けた作曲家だが、バッハが偉大すぎるのか、現在ではやや過小評価に過ぎると思う。

ヘンデルの合奏協奏曲作品6は、器楽作品におけるヘンデルの最高傑作と言われている。
作品6というと、若書きの作品のように聞こえるが、作曲されたのは1737年。ヘンデル52歳の作品で、「メサイア」の2年前に当る。円熟期の作品と言って良い。

協奏曲というと、一般にソロ楽器とオーケストラのための協奏曲を連想するが、合奏協奏曲はバロック時代に成立した形式で、それぞれ複数の奏者による2つのグループによって演奏される形式である。通常、「コンチェルティーノ」と呼ばれる小グループと、「リピエーノ」と呼ばれる大グループによって演奏される。
近年は訳さずに「コンチェルト・グロッソ」と称することも多い。
合奏協奏曲の最初の有名な作曲家はアルカンジェロ・コレッリだが、その後ヘンデルが作品6としてまとめられている12曲の合奏協奏曲を書いたほか、管楽器を用いてリピエーノを拡大させ作品も残している。
バッハのブランデンブルク協奏曲(全6曲)も、合奏協奏曲の形式と考えることが出来る。
ブランデンブルク協奏曲とヘンデルの作品6は、この分野での2大傑作と言っていいかも知れないが、作風には大きな違いがある。
バッハの作品は、楽器編成や楽章構成も全て異なり、驚くべき多様性を見せる。これは言わばバッハの作曲能力を示すカタログのようなもので、「自分には何でも出来る」という自負のようなものが感じられる。
一方ヘンデルの12曲にはそこまでの多様性はないが、その楽想の豊かさには比類がない。稀代のメロディメーカーでもあるヘンデルの面目躍如たる作品である。ヘンデルはこの12曲をわずか1ヶ月ほどで書き上げた。速筆で知られるヘンデルならではの技だろう。ちなみに「メサイア」は24日間で作曲されたと言う。にわかには信じられないスピードだ。

合奏協奏曲「アレクサンダーの饗宴」は、作品6の前年に書かれた作品で、同名のオラトリオの幕間に演奏された。
2つの合奏体のための協奏曲は、2つの管楽器群を加えたもので、実際には3つの合奏体から構成されている。
第2番の第3楽章は、「メサイア」の中の”Lift Up Your Heads”のメロディーが使われているが、他の楽章も別のオラトリオからのメロディーが使われているようだ。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

名盤コレクション100 マーラー/リュッケルトの詩による3つの歌(フェリアー、ワルター/VPO)

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マーラー/リュッケルトの詩による3つの歌
カスリーン・フェリアー(コントラルト)
ブルーノ・ワルター/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
1952年5月14~20日録音

リュッケルト歌曲集より
 私はこの世に見捨てられ
 私は仄かな香りを吸い込んだ
 真夜中に

リュッケルト歌曲集は、1901年から1902年にかけて作曲された。
以下の5曲で構成されるが、特に演奏の順序に指定はない。
フェリアー/ワルターの演奏のように、数曲選んで演奏されることも多い。

1 私の歌を覗き見しないで
2 私は仄かな香りを吸い込んだ
3 私はこの世に見捨てられ
4 真夜中に
5 美しさゆえに愛するのなら

マーラーはその創作のほとんどを、交響曲と歌曲に当てたが、その2つはマーラーにとっては分かちがたく結びついており、他に類例のない独特な世界を作り出し、最終的に「大地の歌」に結実した。

短い時間ながら、いくつかの忘れられない録音を残したフェリアーとワルターの関係は、音楽の歴史の中でも特別な関係と言っていいだろう。
リュッケルト歌曲集は、フェリアーが40歳を迎えたばかりの時の名唱である。
無情なことに、わずか1年後に天に召されてしまうのである。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

名盤コレクション98、99 シベリウス/ヴァイオリン協奏曲

シベリウス/ヴァイオリン協奏曲

シベリウスは若い頃ヴァイオリニストを目指していたが、ステージに上がると極度に緊張する性格だった。そのため演奏家になることを断念し、作曲家に転向することになったのは、後世の我々にとって幸いだったと言える。
シベリウス唯一のヴァイオリン協奏曲は、1903年に作曲されたが、ブラームスのヴァイオリン協奏曲を聴いて、その交響的な表現に衝撃を受ける。
シベリウスは直ちに改訂に取りかかり、1905年に発表された。現在まで演奏されるのは専ら1905年の改訂版だが、一部に原典版の録音もあるようだ。

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ヤッシャ・ハイフェッツ(ヴァイオリン)
ワルター・ヘンドル/シカゴ交響楽団
1959年1月10、12日録音

ワルター・ヘンドルという人は、ハイフェッツのお気に入りの指揮者で、協奏曲の録音にはよくある「合わせ上手」なのだと思う。
これは専らハイフェッツの名人芸を聴くための盤と言えるだろう。


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ジネット・ヌヴー(ヴァイオリン)
ワルター・ジュスキント/フィルハーモニア管弦楽団
1945年11月21日録音

30歳で事故死したヌヴーには、協奏曲の録音はわずかしか残されていない。
ブラームスが4種類もあるのが目立っているが、その他にはベートーヴェンとシベリウスが残っているだけである。
シベリウスの協奏曲は、その中でも名盤と言っていいだろう。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

名盤コレクション97 ブルックナー/交響曲第9番(シューリヒト/VPO)

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ブルックナー/交響曲第9番
カール・シューリヒト/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
1961年11月録音

ブルックナーを聴くことが増えたのは、コロナ禍と無縁ではないと思う。
こういう状況では、ショスタコーヴィッチを聴く気にはなれない。
マーラーにもなかなか手が伸びなくなった。マーラーの音楽は心をざわつかせるからだ。
そこに行くと、ブルックナーの音楽は心を落ち着かせてくれるということがよくわかった。
もちろん、どちらがいいとか悪いとかいう話ではない。

ブルックナーの交響曲第9番は、第8番と並んで作曲者の最高傑作であるばかりではなく、交響曲の歴史の中でも最大級の傑作と言って良い。
これは考えると大変なことだ。第9番は未完成の作品だからである。

モーツァルトの「レクイエム」とは異なり、第4楽章のスケッチはかなりの部分が完成されていて、復元版も複数録音されている。
ただ、聴き慣れないせいか、いまひとつしっくりしない。
やっぱり3楽章のアダージョまでの完成度が高い。変な表現だが。
第2楽章スケルツォ、第3楽章アダージョだから良かったのである。
9番のスケルツォは非常にユニークな音楽だが、これで終わってしまうと中途半端な印象は否めない。
第2楽章スケルツォ、第3楽章アダージョというパターンは、ベートーヴェンの9番に起源を求めることが出来る。ブルックナーも8番で採用して成功したので、9番でもそうしたのかも知れない。
このおかげで、天国的なアダージョで終えることが出来た。マーラーの9番との類似性が指摘される所以である。

9番は特に好きな曲で、名盤も多いが、定番のシューリヒトを選んだ。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

名盤コレクション96 ブルックナー/交響曲第8番(朝比奈隆/大阪フィル)

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ブルックナー/交響曲第8番(ハース版)
朝比奈隆/大阪フィルハーモニー交響楽団
1994年7月24日、東京サントリーホールでのライヴ録音

自分のように1970年代ごろから聴き始めた人は、大なり小なり音楽評論家宇野功芳の影響を受けている可能性がある。
宇野功芳の評論は、その断定的な口調と独特の言い回しからファンも多かったが、時には揶揄や嘲笑の対象にもなった。
特にブルックナーの音楽に関しては、ハンス・クナッパーツブッシュ、カール・シューリヒト、ロヴロ・フォン・マタチッチ、朝比奈隆の4人が最高であると主張し続けた。
その4人に注目したのは慧眼であるとは思う。宇野の評論がなかったら、その4人が現在ほどの人気と知名度を維持することはなかっただろう。
大指揮者クナッパーツブッシュにしても、録音嫌いのために聴けるレコードが限られ、しかも主なレパートリーがとっつきにくいワーグナーとブルックナーなのだから。
反面、その4人を持ち上げる余り、他の演奏は認めないかのような姿勢は批判を浴びた。宇野の評論は功罪半ばと言ったところだろう。
ただ、その4人のブルックナーを聴くと、宇野が言いたかったこともわかるような気もする。
特に朝比奈隆と大阪フィルをここまで支持し続けたのは大きな功績だと思う。
この8番のライヴを聴く時、世界的に見ればかなりローカルなコンビがここまでの高みに達したことは奇跡に近いと思う。

当録音は、終演後の拍手とカーテンコールが13分も収録されている。
楽章間のインターバルもノーカットで収録されているため、実際にコンサートホールにいるような臨場感がある。
そのため、終演後の拍手まで含めて101分という、長時間収録になっている。
ライナーノーツを書いているのは、お約束の宇野功芳で、当然のことながら絶賛している。
ただし、宇野功芳は提灯記事は書かなかった。ライナーノーツの中で批判することもあった。


余談だが、宇野功芳が漫談家牧野周一の長男であったことを、最近になって知った。
もっとも、最近の人は牧野周一を知らないだろう。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

名盤コレクション95 ブルックナー/交響曲第7番(クナッパーツブッシュ/VPO)

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ブルックナー/交響曲第7番
ハンス・クナッパーツブッシュ/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
1949年8月30日、ザルツブルク音楽祭ライヴ

著名な作曲家の中で、ブルックナーは最もユニークな存在だ。
その証拠に、ブルックナーの書法には”ブルックナー”の名を冠した名称が少なくとも3つある。
■ブルックナー開始:弦のトレモロで静かに開始する。「原始霧」とも例えられる。4番の冒頭が典型的で7番も同様。ただ、その淵源はベートーヴェンの9番にあるのかも知れない。
■ブルックナー休止:総奏が一斉に休止し、しばしの沈黙のあと、唐突に別の楽想に移行する。
■ブルックナーリズム:2連符+3連符(タータータタタ、タータータタタ)という、独特のリズム。
Wikiには、この他に「ブルックナー・ユニゾン」「ブルックナー・ゼクエンツ」という用語も載っている。

ブルックナーは特殊というイメージが強いせいか、苦手あるいは嫌いという人も多い。
名ピアニストで指揮者になったA氏は、かつてブルックナーが嫌いと公言して反発を浴びた。好き嫌いはあってもかまわないが、何十年経っても言われつづけている。

ブルックナーの入門は4番と7番という人が多い。自分もそうだった。
特に7番の第2楽章「アダージョ」は特に素晴らしい。ただ、7番は終楽章が構成的に弱いと思う。8番と9番に比べ、今ひとつとされているのはその辺にあるのかも知れない。

クナッパーツブッシュの7番は意外に少ないようだが、ウィーンフィルとの名演が残されているのは幸運だった。
録音もこの時代としては悪くない。
意外とあっさりした演奏だが、7番の曲想には合っていると思う。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

名盤コレクション94 ブルックナー/交響曲第5番(シューリヒト/VPO)

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ブルックナー/交響曲第5番
カール・シューリヒト/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
1963年2月24日、ウィーン(ライヴ)
モノラル録音

ブルックナーの最高傑作が8番あるいは9番であることは間違いないだろう。
ブルックナーファンの間では、次いで5番を推す人が多い。
4番や7番ほど親しみやすくはないが、逆にブルックナーらしさが横溢する傑作であると言っていいだろう。

ここで取り上げたのはシューリヒトによるウィーンでのライヴ録音。
モノラルだが、エネルギーは十分だ。
シューリヒトのブルックナーにしてはテンポが目まぐるしく動く。そのため、賛否両論がある演奏でもある。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

名盤コレクション93 ブルックナー/交響曲第4番(ベーム/VPO)

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ブルックナー/交響曲第4番「ロマンティック」
カール・ベーム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
1973年録音

ブルックナーの交響曲では、親しみやすい内容と「ロマンティック」というニックネームも手伝ってか、人気が高い1曲で、ブルックナーはこの曲で入門したという人が多い。自分もその一人。
同様に人気がある7番から、最高傑作とされる8番と9番を聴き、次いで5番と3番に行く。6番はやや地味な存在で、2番以前を聴く機会は今でも少ない。

ベームのブルックナー録音は多いとは言えないが、最も評価の高い演奏である。
ウィーンフィルの音色を楽しむにも最良の録音と言われている。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

名盤コレクション92 ブルックナー/交響曲第3番「ワーグナー」(ベーム/VPO)

無題
ブルックナー/交響曲第3番「ワーグナー」
カール・ベーム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
1970年録音

ブルックナーの交響曲は、未完の第9番まで、番号がついたものが9曲。
他に、第1番のあとに書かれたが番号が付けられず、後に作曲者本人によって第0番と呼ばれるようになった1曲と、習作として作曲され、便宜的に第00番と呼ばれる1曲がある。
今日よく演奏されるのは3番以降の曲で、それ以前の曲を聴く機会は少ない。
となると第3番は、ブルックナーにとって初めて成功した作品のようにも思えるが、よく知られているようにこの曲の初演は惨憺たるものだった。

3番には「ワーグナー」というニックネームもあるように、尊敬していたワーグナーに献呈された。
ワーグナー自身もこの曲を気に入り、初演に力を貸してくれることになった。
ところが初演を指揮するはずだったヨハン・ヘルベックが、直前に急死してしまう。
仕方なく、作曲者自身が指揮をすることになったが、ブルックナーは指揮が非常に不得意だった。
素人のような指揮に演奏にも熱が入らず、聴衆も作品を理解せず、一人帰り、二人帰り、最後まで残っていたのはわずか20人ほどだった。
しかもその聴衆の大部分は終演後にブーイングを浴びせる始末で、拍手を送ったのは一説には3人だけだったとも言われる。
ところがその3人の中に当時17歳の少年がいた。その少年の名を「グスタフ・マーラー」と言う。

なるほど、伝説とはこうして作られるものか。


1970年、ベーム全盛期の演奏。
1973年の第4番とともに、ベームによるブルックナーの代表的な名演と言えるだろう。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

名盤コレクション90、91 ショパン/24の前奏曲(ポリーニ盤、アルゲリッチ盤)

新型コロナウィルスの影響で、今年行われる予定だったショパン・コンクールも延期になった。
自分はコンクールにはほとんど興味がないのだが、この際なので少しまとめて見よう。

ショパン・コンクールは5年に1回、ショパンの故国ポーランドで行われる。
ピアノ部門のみ、ショパンの作品のみで行われる、珍しいコンクールである。
また、出場者には16歳以上30歳以下という年齢制限があるため、これに優勝するのは極めて難しい。
数学の最高の賞である、フィールズ賞にも匹敵する狭き門であるとも言えるだろう。

前回までの優勝者は以下の通り
第1回(1927年) レフ・オボーリン(ソ連)
第2回(1932年) アレクサンドル・ウニンスキー(ソ連)
第3回(1937年) ヤコブ・ザーク(ソ連)
第4回(1949年) ハリーナ・チェルニー=ステファンスカ(ポーランド)、ベラ・ダヴィドヴィッチ(ソ連)
第5回(1955年) アダム・ハラシェヴィッチ(ポーランド)
第6回(1960年) マウリツィオ・ポリーニ(イタリア)
第7回(1965年) マルタ・アルゲリッチ(アルゼンチン)
第8回(1970年) ギャリック・オールソン(アメリカ)
第9回(1975年) クリスティアン・ツィメルマン(ポーランド)
第10回(1980年) ダン・タイ・ソン(ベトナム)
第11回(1985年) スタニスラフ・ブーニン(ソ連)
第12回(1990年) 1位なし
第13回(1995年) 1位なし
第14回(2000年) ユンディ・リ(中国)
第15回(2005年) ラファウ・ブレハッチ(ポーランド)
第16回(2010年) ユリアンナ・アヴデーエワ(ロシア)
第17回(2015年) チョ・ソンジン(韓国)

16人の優勝者のうち、本国のポーランド4人、ソ連-ロシアが6人と過半を占める。
いわゆる西洋音楽の本家筋、ドイツ、オーストリア、フランス、イタリアからはポリーニひとりだけで、ほぼ全てが西洋音楽の周辺国から出ているのは興味深い。
ソ連-ロシアを含め、音楽コンクールでの入賞を国威発揚として積極的に推奨している国が優勝者を輩出するのは、別に不思議ではない。
オリンピックと同じである。コンクールというのは音楽のスポーツ化だからである。
今後は中国が各国のコンクールを席巻することになるかも知れない。実際、出場者数でも中国がトップらしい。
ただ、16人の中で後に大看板になった人と言えば、ポリーニとアルゲリッチであることは間違いない。(次いでツィメンルマンか?)
この2人を優勝者として輩出したことがショパンコンクールの権威を高めることになったと言って差し支えないだろう。


ポリーニとアルゲリッチ
現役のピアニストでは最高の人気と実力を誇る2人だが、あらゆる点で対照的である。
情熱的で熱いアルゲリッチと、あくまでも知的でクールなポリーニと。
好きな曲しか録音しない、という点では一緒だが、アルゲリッチの方が徹底している。
2人のレパートリーは、お互いが避けているのではないかと思われるほど一致しない。
その中で、聴き比べがしやすいのがショパンの前奏曲集である。

ショパンの前奏曲には、24の前奏曲OP28のほか、独立した2曲がある。アルゲリッチ盤はその2曲も含めた演奏である。
ショパンの「24の前奏曲」は、バッハの平均律クラヴィーア曲集に触発され、24の全ての調を網羅した曲集として作曲された。
バッハが、ハ長調-ハ短調-嬰ハ長調-嬰ハ短調と、ひとつずつ上って行くのに対し、ショパンの前奏曲はハ長調-イ短調-ト長調-ホ短調という具合に、平行短調を挟みながら5度ずつ上って行き、ニ短調で終わる。
ショパンの前奏曲は、そのうちの何曲かが独立で演奏されることは少なく、24曲で大きなまとまりを持った1曲という感覚で捉えられることが多い。
急速な曲-ゆったりとした曲、明るい曲-暗い曲、激しい曲-穏やかな曲という、前後の対比が際立つ。
長さもまちまちで、最も長い15番が5分ほど。1分未満の曲もある。


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マウリツィオ・ポリーニ(ピアノ)
1974年録音
知的でクールなポリーニの特徴がよく出た演奏。
分析的で、楽曲の構造がよくわかる。
LP時代、一番激しい16番でA面が終了し、B面にかけ替えて対照的な17番からという構成になっていた。
ここで一息入れることで、その対比を際立たせる意図があったと思われる。


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マルタ・アルゲリッチ(ピアノ
1975年録音
情熱的で、デモーニッシュな演奏として比類がない。
アルゲリッチは16番から間髪を入れずに17番に入る。逆に対比を際立たせる手法で、こういうやり方をするピアニストが多い。

ところでアルゲリッチの16番では、明らかに半音違って弾いている部分があるが、楽譜が違うのだろうか。前から気になっているところだ。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

名盤コレクション89 バッハ/平均律クラヴィーア曲集第1巻、第2巻(リヒテル)

バッハ/平均律クラヴィーア曲集第1巻、第2巻
スヴャトスラフ・リヒテル(ピアノ)
録音 1970~73年 ザルツブルク、クレスハイム宮殿

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1978年発売のLP 5枚組

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CDは4枚組


平均律とは鍵盤楽器の調律法で、1オクターブの12音を均等に割り振る方法である。
12で割るわけではなく、2の12乗根(1.059463...)を掛けて行く。12回掛けると2になる。

A音を440Hzとすると、
 A# 466.163762...
 B   493.883301...
 C   523.251131...
という風に増えていく。

平均律のメリットは、ひとつの楽器で全ての調を演奏できるところで、移調や転調が容易である。
デメリットは完全には調和しないことである。

2つの音が完全に調和するということは、その周波数が整数比にならなければならない。
例えばA音とE音(完全5度)では、2:3 つまり、E音はA音(440Hz)の1.5倍(660Hz)にならなければいけないが、先の計算では、
 E  659.255114...
となり、0.11%ほど低い。
完全には調和しない平均律は、言わば妥協の産物だが、全ての調を演奏できるメリットの方がはるかに大きいと考えられる。
もっとも、自分には660と659.255114...の違いはわからない。
ただ、上手い合唱を聴いて感銘を受けるのは、これがピタリと調和した時なのかも知れない。


バッハの平均律クラヴィーア曲集は第1巻と第2巻があり、それぞれ24の全ての調による「前奏曲とフーガ」で構成されている。
英語では ”Well-tempered clavier” と言う。「良く調律された鍵盤楽器」というような意味で、特に平均律と謳ったわけではなく、それがわかりやすと考えた人の訳なのだろう。
作曲者の本意としては「よく調律された楽器であれば、24のあらゆる調で書かれた作品を演奏することが可能である」という趣旨だろうと考えられる。
もっと意訳すれば「24の調のための前奏曲とフーガ」という名前がいいかも知れない。

曲順は第1番ハ長調から始まり、ハ短調、嬰ハ長調、嬰ハ短調、というように続き、第24番ロ短調で終わる。
この「全ての調を網羅した24曲で構成される曲集」というアイデアは多くの作曲家の創作意欲を刺激した。その代表的な成果がショパンの「24の前奏曲」である。
バッハの「平均律」は古今のピアノ作品の中で最も重要な作品と位置付けられており、これをピアノ音楽の旧約聖書、ベートーヴェンの32のソナタが新約聖書に例えられている。


リヒテルの平均律は、1970年から73年にかけて、ザルツブルクのクレスハイム宮殿で録音された。
使用された楽器はベーゼンドルファー。
LP時代から、平均律と言えばこれ、と愛聴してきた自分にとっての宝物である。

同じく名盤との誉れ高いグールド盤とは、何から何まで正反対のような演奏である。
グールド盤が、バッハ作品をピアノで演奏することの意味を極限まで追求した演奏であるならば、リヒテルによる演奏は、バッハの作品の中からロマン性を紡ぎ出し、ピアノの持つ無限の可能性を開示したものといえるだろう。この演奏に対しては、ロマンティックに過ぎるという否定的な意見もある。

録音は、宮殿という環境も影響しているのだろうか、残響過多で必ずしもいい録音とは言いがたい。ただ、第2巻に関しては残響が抑え気味になっている。

CDから2曲がリッピングできなかったため、2曲だけLPからデジタル化した。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

名盤コレクション88 フォーレ/合唱曲集(ガブリエル・フォーレ少年合唱団)

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フォーレ/合唱曲集
ガブリエル・フォーレ合唱団

ラシーヌの雅歌
マリーア・マーテル・グラティエ
タントゥム・エルゴ
アヴェ・ヴェルム
アヴェ・マリーア
祈り
小ミサ曲
レクイエム~ピエ・イエズ
レクイエム~イン・パラディスム

フォーレの合唱曲と言えば、何はともあれ「ラシーヌの雅歌」である。
この作品はフォーレ20歳の折、音楽学校の卒業作品として作曲された。
フランス古典悲劇の作家ジャン・ラシーヌによる、敬虔な信仰を歌った「宗教的賛歌」の詩句をもとにしている。このため「ラシーヌ賛歌」と呼ばれる場合もあるが、ラシーヌを賛美したものとの誤解を避けるため、「ラシーヌの賛歌」あるいは「ラシーヌの雅歌」と呼ぶのが一般的である。

この盤は、オルガン伴奏によるフォーレの宗教的合唱作品を集めたLPで、CD化もされていないため、現在では入手困難と思われる。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

名盤コレクション87 モーツァルト/ピアノ協奏曲第20、24番(ハスキル、マルケヴィッチ/ラムルーO)

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モーツァルト/ピアノ協奏曲第20、24番
クララ・ハスキル(ピアノ)
イーゴリ・マルケヴィッチ/ラムルー管弦楽団
録音:1960年11月14、18日

今年はクララ・ハスキル没後60年に当たる。
これは死のわずか1ヶ月前に行われたもので、ハスキル最後の録音である。
モーツァルトを得意としたハスキルの優しい音色が心に沁みる、代表的な名盤である。

ラムルー管弦楽団(あるいはコンセール・ラムルーとも)は、1881年にパリで設立された民間のオーケストラで、ドビュッシーの「海」「夜想曲」、ラヴェルの「ラ・ヴァルス」、フォーレの「ペレアスとメリザンド」などを初演したというから、かなりの歴史と伝統を誇る。
マルケヴィッチとのコンビによる一連の録音でよく知られているため、マルケヴィッチの手兵のように思われがちだが、マルケヴィッチの時代は1957~1961年の間だけである。
どうやら、マルケヴィッチを指揮者に迎えたはいいが、その過酷なリハーサルに耐え切れず、追い出してしまったということらしい。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

名盤コレクション86 ビゼー/歌劇「カルメン」全曲(C・クライバー/ウィーン国立歌劇場O)

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ビゼー/歌劇「カルメン」全曲
カルロス・クライバー/ウィーン国立歌劇場管弦楽団・合唱団、ウィーン少年合唱団

カルメン:エレーナ・オブラスツォワ
ドン・ホセ:プラシド・ドミンゴ
エスカミーリョ:ユーリ・マズロク
ミカエラ:イゾベル・ブキャナン
フラスキータ:チェリル・カンフシュ
メルセデス:アクセル・ガル
スニガ:クルト・リドゥル
モラレス:ハンス・ヘルム
レメンダード・ハインツ・ツェドニク
ダンカイロ:パウル・ヴォルフルム

1978年12月9日、ウィーン国立歌劇場

オペラの本場はイタリアとドイツだが、古今のオペラで最も高い人気を誇るのが、フランスのオペラであるのは皮肉である。
「カルメン」の人気は、何といっても親しみやすい、有名なメロディが各所にちりばめられていることがポイントだろう。
ストーリーは格別面白いとは思えない。ただ、ここで取り上げた公演では台詞のカットが多く、ストーリーの進行がわかりにくいとも言われている。気になる人には減点対象となるだろう。
ウィーン国立歌劇場におけるライヴ映像を収めたDVDで、クライバー唯一の「カルメン」である。
マイクセッティングの関係か、あまり広がりを感じない録音で、音響的にはベストではないと思う。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

名盤コレクション85 フォーレ/レクイエム(コルボ/ローザンヌ器楽・声楽アンサンブル)

フォーレ/レクイエム他
ミッシェル・コルボ/ローザンヌ器楽・声楽アンサンブル
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レクイエムOP48
ラシームの雅歌OP11
オッフェルトリウムOP47-2「恵み深き御母、マリア」
オッフェルトリウムOP65-1「アヴェ・ヴェルム」
オッフェルトリウムOP65-2「タントゥム・エルゴ」
汝はペテロなり
タントゥム・エルゴ
小ミサ
 キリエ
 サンクトゥス
 ベネディクトゥス
 アニュス・デイ
1992年録音
(モーツァルト/レクイエムとカップリングの2枚組)

LP時代から古典的名盤との評価が高い、クリュイタンス/パリ音楽院管弦楽団盤(1962年)を改めて聴いてみたが、合唱が上手くないのと、ソロがオペラティック過ぎるのが今ひとつだと感じた。
ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウの歌唱は完璧だが、やっぱりこの曲には合わないと思う。

コルボの旧盤(ベルン交響楽団、1972年)も伝説的名演だが、ここではあえてローザンヌ盤を採った。
ベルン盤に比べると全体的に早いテンポで、合唱が素晴らしい。
ベルン盤はボーイ・ソプラノが歌っているが、ローザンヌ盤は大人の女声である。
教会的雰囲気を重視したベルン盤か、芸術的表現のローザンヌ盤か、甲乙はつけがたい。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

名盤コレクション84 リヒャルト・シュトラウス/楽劇「ばらの騎士」全曲(C・クライバー/VPO)

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リヒャルト・シュトラウス/楽劇「ばらの騎士」全曲
カルロス・クライバー/ウィーン国立歌劇場管弦楽団・合唱団

元帥夫人:フェリシティ・ロット
オックス男爵:クルト・モル
オクタヴィアン:アンネ・ゾフィー・フォン・オッター
ゾフィー:バーバラ・ボニー
ファーニナル:ゴットフリート・ホーニク
歌手:キース・イカイア=プルディ
マリアンネ:オリヴェラ・ミリャコヴィッチ
ヴァルツァッキ:ハインツ・ツェドニク
アンニーナ:アンナ・ゴンダ
公証人:ヴォルフガング・バンクル

1994年3月23日、ウィーン国立歌劇場でのライヴ録音


「ばらの騎士」の最大の聴きどころは、言うまでもなく第2幕、ばらの騎士としてファーニナル家にやって来たオクタヴィアンがゾフィーと出会い、お互いに恋に落ちでしまう場面だ。
「恋に落ちる」という場面を、これほど見事に音楽で表現し得た人は他にいないだろう。これも音楽史上のひとつの奇跡と言えるかも知れない。

オペラである以上、映像があるというのはありがたい。
増して、このライヴではアンネ・ゾフィー・フォン・オッターとバーバラ・ボニーなのだから。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

名盤コレクション83 リヒャルト・シュトラウス/楽劇「ばらの騎士」全曲(C・クライバー/バイエルン国立歌劇場O)

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リヒャルト・シュトラウス/楽劇「ばらの騎士」全曲
カルロス・クライバー/バイエルン国立歌劇場管弦楽団・合唱団

元帥夫人:クレア・ワトソン
オックス男爵:カール・リッダーブッシュ
オクタヴィアン:ブリギッテ・ファスベンダー
ゾフィー:ルチア・ポップ
ファーニナル:ベンノ・クッシェ
歌手:ゲルハルト・ウンガー
マリアンネ:アンネリーゼ・ヴァース
ヴァルツァッキ:デイヴィッド・ソー
アンニーナ:マルガレーテ・ベンツェ
警官:アルブレヒト・ペーター
元帥夫人の執事:ゲオルク・パスクダ
ファーニナルの執事:フランツ・クラールヴァイン
弁護士:ハンス・ヴィルブリンク
主人:ロレンツ・フェーエンベルガー
フルーティスト:ラインハルト・シュミット
美容師:カール・シュレーダー

1973年7月13日、バイエルン国立歌劇場でのライヴ録音

カルロス・クライバーは録音嫌いで知られ、正規録音は極めて少ない。
にもかかわらず、レコード録音における5大指揮者(フルトヴェングラー、ワルター、トスカニーニ、カラヤン、バーンスタイン)に比肩しうる、絶大な人気を持つ。
カルロスの録音の特徴は
 スタジオ録音は数えるほどしかなく、ほとんどがライヴ録音
 協奏曲録音はほとんどない。(だからリヒテルとの共演は貴重である。でもドヴォルザーク)
 レパートリーは狭い。というより、好きな曲しかやらないのだろう。
  ベートーヴェンなら4番と7番(5番の名演はあるが、例外的)
  ブラームスは2番と4番
  ハイドンは94番「驚愕」だけ
  モーツァルトではなぜか33番と36番
  ヴェルディなら「オテロ」と「椿姫」
  ワーグナーは「トリスタンとイゾルデ」だけ
  プッチーニは「ラ・ボエーム」だけ
  そしてリヒャルト・シュトラウスでは「ばらの騎士」
 徹底している。
  ヨハン・シュトラウスの「こうもり」は得意としているが、これは納得だろう。シュトラウスの作品は多いように思えるが、2回のニューイヤーコンサート以外では、あまり取り上げていない。

「ばらの騎士」は映像作品も含め、多くの録音が残されているが、CDで聴けるものとしては決定盤的なものだろう。
父エーリッヒとの聴き比べも面白い。


ところで、このORFEO盤とは別に1974年7月20日、モナコでのライヴ録音とされる出所不明のCDがある。
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主要キャストでは、ゾフィーがルチア・ポップからHilda de Grooteという人に変わっているほかは1973年盤とほぼ同じである。
聴いてみると1973年盤と全く同一である。Hilda de Grooteという人は知らないのだが、ゾフィーは明らかにルチア・ポップの声だった。
音質も上のORFEO盤の方がはるかに優れている上、第2幕の冒頭部分が数秒欠落しているので、あえて手を出す価値はないと思われる。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

名盤コレクション82 モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」全曲(E・クライバー/VPO)

モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」全曲
エーリッヒ・クライバー/ ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団・ウィーン国立歌劇場合唱団

フィガロ:チェーザレ・シエピ
アルマヴィーヴァ伯爵:アルフレート・ペル
伯爵夫人:リーザ・デラ・カーザ
スザンナ:ヒルデ・ギューデン
ケルビーノ:シュザンヌ・ダンコ
マルチェリーナ:ヒルデ・レッスル=マイダン
バルトロ:フェルナンド・コレナ
ドン・バジリオ:マーレイ・ディッキー
ドン・クルツィオ:フーゴ・マイヤー・ヴェルフィンク
バルバリーナ:アニー・フェルバーマイヤー
アントニオ:ハラルト・プレーグルヘフ(Bs:)
少女1シュザンヌ・ダンコ
少女2:アニー・フェルバーマイヤー

録音:1955年6月、ウィーン(セッション録音)

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1956年のモーツアルト生誕200年に合わせ、多くのモーツァルト作品の録音が行われた。
今では考えにくいことだが、その頃までモ-ツァルトに対する評価はベートーヴェンなどと比べて高いものではなかった。
生誕200年を機にモーツァルトの再評価が行われ、1991年の没後200年では、バブルの影響もあって多くのイベントや商品が乱造された。
その結果、モ-ツァルトの評価はうなぎ登りとはなったのは良かったが、モ-ツァルトの音楽のさまざまな効果を謳う怪しげな言説も横行した。
バブル崩壊とともに、そのような現象は落ち着いて来たようにも感じるが、最近ではその反動なのか、ベートーヴェンに比べてモーツァルトを過少に評価するような風潮も垣間見える。
いまだにモ-ツァルトとベートーヴェンの優劣を論じるような人がいるのは困ったものだ。天才はいつの時代も正しく評価されないということか。


エーリッヒ・クライバーによる録音も、この時に行われた。
ステレオ初期の名盤である。
レチタティーヴォを含めた完全な録音は、これが初めてだと言う。
ベーム盤ではカットされている、第4幕のマルチェリーナとバジリオのアリアも含んだものだが、マルチェリーナのアリアはスザンナ役のギューデンが歌っている。
デラ・カーザ、ギューデン、ダンコなどの配役も申し分ない。シエピのフィガロはさすがに立派だが、貫禄ありすぎの感じがしないでもない。
これを聴くと、やっぱりカルロスの「フィガロ」を聴きたかったという人は多いだろう。
カルロスはなぜ「フィガロ」を録音しなかったのだろう。「ばらの騎士」は再三振っているのだから、合っていると思うのだが。
ちなみにカルロスが残したモーツァルトの録音は、交響曲第33番と第36番のみ。この取り合わせも謎である。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

名盤コレクション81 リヒャルト・シュトラウス/楽劇「ばらの騎士」全曲(E・クライバー/VPO)

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リヒャルト・シュトラウス/楽劇「ばらの騎士」全曲
エーリッヒ・クライバー/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン国立歌劇場合唱団
配役
元帥夫人:マリア・ライニング(ソプラノ)
オックス男爵:ルートヴィッヒ・ウェーバー(バス)
オクタヴィアン:セーナ・ユリナッチ(ソプラノ)
ファーニナル:アルフレート・ベル(バリトン)
ゾフィー:ヒルデ・ギューデン(ソプラノ)
マリアンネ:ユディット・ヘルヴィッヒ(ソプラノ)
ヴァルツァッキ:ペーター・クライン(テノール)
アンニーナ:ヒルデ・レッスル=マイダン(メゾソプラノ)
警部:ワルター・ベリー(バリトン)
侯爵家の家令:ハラルト・プレーグルヘフ(バス)
ファーニナル家の家令:アウグスト・ヤーレッシュ(テノール)
公証人:フランツ・ビールバッハ(バス)
家主:エーリッヒ・マイクート(テノール)
歌手:アントン・デルモータ(テノール)


録音:1954年6月

エーリッヒ・クライバーが残した録音の中では最良のものだ。
これを聴くと、やっぱり血は争えないと思う。息子カルロスの演奏を彷彿とさせる。(いや、それは反対だ。カルロスがエーリッヒを彷彿とさせるのだ)
ライニング、ユリナッチ、ギューデンの組み合わせは、この時代の鉄板だったようだ。
モノラル録音だが、音は良好である。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

名盤コレクション80 タブラ・ラサ/アルヴォ・ペルトの世界

タブラ・ラサ/アルヴォ・ペルトの世界

タブララサ
1 フラトレス
  ギドン・クレーメル(ヴァイオリン)
  キース・ジャレット(ピアノ)
  1983年10月、バーゼル
2 ベンジャミン・ブリテンへの追悼歌
  デニス・ラッセル・デイヴィス/シュトゥットガルト国立管弦楽団
  1984年1月、シュトゥットガルト
3 フラトレス
  ベルリン・フィルハーモニー12チェリステン
  1984年2月、ベルリン
4 タブラ・ラサ
  ギドン・クレーメル(ヴァイオリン)
  タチアナ・グリンデンコ(ヴァイオリン)
  アルフレート・シュニトケ(プリペアード・ピアノ)
  サウルス・ゾンデキス/リトアニア室内管弦楽団
  1977年11月、ボン

クラシック音楽が同時性を失って久しい。
普段我々が聴いているのはモーツァルトやベートーヴェンなど、過去の作品ばかりだ。
誰それの新曲が発表されるので聴きに行くのが楽しみ、などということは絶えてない。
現代音楽がわけがわからない袋小路に入り込み、一般の聴き手の感覚から乖離してしまったことが原因だが、そもそもどうしてそうなってしまったのか。
そんな中で、新作を期待されている数少ない現代作曲家がアルヴォ・ペルトである。

ペルトは1935年、エストニア生まれの作曲家。
このCDが発売になった1984年ごろは、アルヴォ・ペルトなる作曲家は全く無名だった。
作曲者自身が「ティンティナブリ(鈴鳴らし)様式」と名付けた、極めて静謐で美しい音楽が人々に衝撃を与え、多くの聴き手の心を鷲掴みにしたのだ。

ペルトの音楽は初めからそのような様式だったわけではない。
初期の作品群は、厳格な新古典主義から、十二音技法やセリエ音楽にまで及んでいる。1970年代後半以降の「ティンティナブリ様式」から入った場合、以前の作風は別の意味で衝撃的である。
1971年の交響曲第3番あたりが過渡期にあたる。

このCDに収められている3曲はいずれも1977年の作品で、ペルトの代表作と言っていいだろう。
「フラトレス」は、信仰を同じくする仲間
「タブラ・ラサ」は、空白・白紙といった意味

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

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