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名盤コレクション117 バッハ/管弦楽組曲第3番(フルトヴェングラー/BPO)

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バッハ/管弦楽組曲第3番
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
1948年10月22日録音

フルトヴェングラーの管弦楽組曲は、第3番のみ2種類の録音が残っている。
1948年10月22日の放送用録音と、2日後の24日のティタニア・パラストでのライヴである。
この日のコンサートは
 バッハ/管弦楽組曲第3番
 シューベルト/交響曲第8番「未完成」
 ブラームス/交響曲第4番
というプログラムで行われ、3曲とも録音が残っている。
22日はそれに先立って行われた放送用録音で、なぜかシューベルトだけ録音が残っていない。

この年の10月から11月にかけて、フルトヴェングラーは大忙しだった。録音から追って見ると、
10月3日には、ロンドンでウィーン・フィルとのライヴ
17~18日にはハンブルク・フィルに客演
22日にベルリンで放送用録音
24~26日にライヴ
11月2~3日にはロンドンでブラームス第4のリハーサル録音が残っているので、同じプログラムでコンサートが行われたのかも知れない。
そして12~19日にはストックホルム・フィルに客演している。


この録音を「名盤」とするには異論もあるだろう。
確かに現代人の耳には、あまりに大時代に響くだろう。自分だってそう思う。
この曲の後半は本来「舞曲」なのだが、このテンポの動かし方は明らかに間違っているのかも知れない。
だが、じっくりと耳を傾けていれば、フルトヴェングラーの音楽に向き合う真摯さのようなものが伝わって来ないだろうか。
何より、何と美しい「エア」なのだろう。

なお、24日のライヴ録音だが、自分が持っている音源では聞き苦しい雑音が多かったので、ここでは22日の放送録音を選んだ。
またフルトヴェングラーは、1929年に「エア」のみ録音しており、「SP録音初期のフルトヴェングラー」にも収録されている。
SP録音初期のフルトヴェングラー

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

名盤コレクション116 バッハ/管弦楽組曲全集(リヒター/ミュンヘン・バッハ管弦楽団)

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バッハ/管弦楽組曲全集
カール・リヒター/ミュンヘン・バッハ管弦楽団
1983年録音

管弦楽組曲第1番ハ長調BWV1066
 序曲
 クーラント
 ガヴォット1&2
 フォルラーヌ
 メヌエット1&2
 ブーレ1&2
 パスピエ1&2

管弦楽組曲第2番ロ短調BWV1067
 序曲
 ロンドー
 サラバンド
 ブーレ1&2
 ポロネーズ ドゥーブル
 メヌエット
 バディヌリ

管弦楽組曲第3番ニ長調BWV1068
 序曲
 エア
 ガヴォット1&2
 ブーレ
 ジーグ

管弦楽組曲第4番ニ長調BWV1069
 序曲
 ブーレ1&2
 ガヴォット
 メヌエット1&2
 レジュイサンス


カール・リヒターは、1926年、牧師の子として生まれた。
11歳の時、ドレスデン聖十字架教会の聖歌隊に入り、初めての音楽教育を受ける。ここでバッハやハインリッヒ・シュッツの音楽に親しんだ。
1946年、ライプツィヒ音楽院に入学。ギュンター・ラミンに師事する。
1951年、ミュンヘンの聖マルコ教会のオルガニストに就任。これを機にミュンヘンに移る。
同年、ハインリッヒ・シュッツ合唱団の指揮者となる。これが指揮者としてのスタートだったようだ。
リヒターはこの合唱団を、バッハのカンターターを演奏する目的でミュンヘン・バッハ合唱団と改称した。
1953年、ソリストを募集してミュンヘン・バッハ管弦楽団を創設する。
以後、バッハ作品を中心に、多くのレコーデイングを行った。

リヒターのバッハは非常に厳格な表現で、ピリオド楽器全盛の現在ではいささか重々し過ぎると感じるかも知れないが、現在でもバッハの演奏ではリヒターを最上とする人が多い。
自分にとってもリヒターは基準である。
初めは重々し過ぎると感じても、聴き進むうちに全く気にならなくなり、リヒターのバッハに惹き込まれていくのである。

ちなみに、フルトヴェングラーは第3番のみ録音を残しているが、相通じるものがあるように思う。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

名盤コレクション115 ブラームス/交響曲第1番(フルトヴェングラー/北西ドイツ放送SO)

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ブラームス/交響曲第1番ハ短調OP68
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー/北西ドイツ放送交響楽団
1951年10月27日 ハンブルクでのライヴ録音

1945年、指揮者ハンス・シュミット・イッセルシュテットは、イギリス政府からドイツ国内のオーケストラのメンバーを集めて再結成するようにとの要請を受けた。
そして生まれたのが「北西ドイツ放送交響楽団」である。(「ハンブルク北西ドイツ放送交響楽団」と表記する資料もある)
後に「北ドイツ放送交響楽団」となる。この名称ではギュンター・ヴァントの名が連想されるだろう。彼は1982年から90年まで主席指揮者を務めた。
現在は「NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団」となっていて、2017年にオープンした「エルプフィルハーモニー・ハンブルク」を本拠地としている。
「エルプフィルハーモニー・ハンブルク」はヘルツォーグ&ド・ムーロンの設計で話題になった。

1951年10月27日、このオーケストラに初の客演指揮者としてフルトヴェングラーが指揮台に立った。
この日のプログラムは、ハンブルク出身であるブラームスの作品。
 ハイドンの主題による変奏曲
 ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲
 交響曲第1番
で、このCDでは二重協奏曲を除く2曲が聴ける。(なぜか二重協奏曲の録音は残っていない)

フルトヴェングラーはブラームスの作品を数多く演奏しており、名盤も多い。
交響曲第1番は10種類の録音が残っている。(他に第4楽章のみの録音あり)
1番は明らかにフルトヴェングラー向きの曲だと思うのだが、全集に収められているVPOとの1952年盤を含めて、個人的には他の交響曲ほど圧倒的な印象を受けなかった。
全部を聴いたわけではないが、1番ではこのハンブルク・ライヴが最も優れているように感じた次第である。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

名盤コレクション114 ドヴォルザーク/後期3大交響曲(クーベリック/BPO)

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ドヴォルザーク
交響曲第7番 1971年1月録音
交響曲第8番 1966年6月録音
交響曲第9番 1972年6月録音
ラファエル・クーベリック/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

ドヴォルザークの後期3大交響曲をもうひとつ。
本国チェコのクーベリックによる全集からの分売である。
他に交響詩「野ばと」という珍しい曲と、スメタナの「モルダウ」が入っている。



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

名盤コレクション113 ドイツ・グラモフォン/センテナリー・コレクション 初期録音集1898~1947

ドイツ・グラモフォン/センテナリー・コレクション 初期録音集1898~1947
5枚組CD

発明王トーマス・エジソンが蓄音機を発明したのは1877年のことである。
錫箔を巻いた円筒に記録する方式だった。
前年、エジソンはグラハム・ベルとの電話開発競争に敗れたが、音声を記録することが出来れば電話に頼ることはないと考え、音声の記録・再生に取り組んだのが蓄音機の発明につながったのである。
エジソン自身は、これが音楽の再生に利用されるということはあまり想定していなかったようだ。
実際、エジソンの円筒式蓄音機は性能が低く、音質にはかなり問題があったようだ。

1888年、ベルは錫箔の代わりにワックスを塗った円筒を使用し、録音と再生に別々の針を用いるなどの工夫を施した蓄音機を開発した。
これに触発され、エジソンは改良型の蓄音機を完成させるが、同じころベルの会社で技術者として働いていたエミール・ベルリナーは、円筒式ではなく円盤型の蓄音機を発明した。
大量生産の容易さを考えると、円盤型の優位は明らかで、最終的にはベルリナーの方式が勝利を収めることになる。
ベルリナーの蓄音機は「グラモフォン」と名づけられ、1898年ドイツ・グラモフォン社が創設された。

この5枚組CDは、ドイツ・グラモフォン社が持つ歴史的コレクションの中から、5つのテーマに分けて編集されたものである。
この中で注目すべきは、5枚目のモーツァルト/レクイエムである。
ナチス・ドイツ下で、ユダヤ的な部分を排除するために、歌詞が改変されているのである。

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CD-1 録音のパイオニアたち

エミール・ベルリナーの声(彼の義妹サラ・ハーンへの手紙の朗読からの抜粋)
1897年頃 アメリカ?

スーザ/自由の精神に万歳
ロンドン・ミューニシパル軍楽隊
1898年頃 ロンドン?

グノー(原曲:バッハ)/アヴェ・マリア
アレッサンドロ・モレスキ(ソプラノ・カストラート)
ピアノとヴァイオリン伴奏
1904年4月11日 ローマ

ヴェルディ/歌劇「オテロ」~喜べ
フランチェスコ・タマーニョ(テノール)
ピアノ伴奏
1903年2月7~11日 サンレモ近郊オスペダレッティ

ヴェルディ/歌劇「オテロ」~さらば栄光よ
フランチェスコ・タマーニョ(テノール)
ピアノ伴奏
1903年2月7~11日 サンレモ近郊オスペダレッティ

マペッリ/アヴェ・マリア
フランチェスコ・タマーニョ(テノール)
ピアノ伴奏
1903年2月7~11日 サンレモ近郊オスペダレッティ

蛍の光
ネリー・メルバ(ソプラノ)
コールドストリーム・ガーズ軍楽隊と合唱団
1905年9月 ロンドン

プッチーニ/歌劇「ラ・ボエーム」~愛らしい乙女よ
ネリー・メルバ(ソプラノ)
エンリコ・カルーソー(テノール)
管弦楽伴奏
1907年3月24日 ニューヨーク

プッチーニ/歌劇「ラ・ボエーム」~もう帰らないミミ
エンリコ・カルーソー(テノール)
アントニオ・スコッティ(バリトン)
管弦楽伴奏
1907年3月17日 ニューヨーク

マイアベーア/歌劇「アフリカの女」~おお、パラダイス
エンリコ・カルーソー(テノール)
管弦楽伴奏
1907年2月20日 ニューヨーク

ドニゼッティ/歌劇「愛の妙薬」~人知れぬ涙
エンリコ・カルーソー(テノール)
ピアノ伴奏(推定C・H・H・ブース)
1904年2月1日 ニューヨーク

モシュコフスキー/ギターレOP45
アルフレート・グリューンフェルト(ピアノ)
1907年 ウィーン

J・シュトラウス(グリューンフェルト編)/春の声
アルフレート・グリューンフェルト(ピアノ)
1913年4月29日 ウィーン

クライスラー/愛の喜び
フリッツ・クライスラー(ヴァイオリン)
ハドン・スカイア(ピアノ)
1911年 ニューヨーク

クライスラー/愛の悲しみ
フリッツ・クライスラー(ヴァイオリン)
ハドン・スカイア(ピアノ)
1911年 ニューヨーク

ムソルグスキー/歌劇「ボリス・ゴドゥノフ」~さらば、我が子よ(ボリスの死)
フョードル・シャリアピン(バス)
管弦楽伴奏
1911年10月15日 サンクト・ペテルブルク

ヴェルディ/歌劇「仮面舞踏会」~希望と喜びに満ちて
ハインリッヒ・シュルスヌス(バリトン)
管弦楽伴奏
1917年 ベルリン

R・シュトラウス/献呈OP10-1
ハインリッヒ・シュルスヌス(バリトン)
リヒャルト・シュトラウス(ピアノ)
1921年 ベルリン?

ベルリオーズ/ローマの謝肉祭
アルトゥール・ニキシュ/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
1920年 ベルリン?

メンデルスゾーン/序曲「フィンガルの洞窟」OP26
ブルーノ・ワルター/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
1924年 ベルリン


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CD-2 管弦楽録音

ベートーヴェン/「コリオラン」序曲
オットー・クレンペラー/ベルリン国立歌劇場管弦楽団
1927年 ベルリン

モーツァルト/ドイツ舞曲K600-2
エーリッヒ・クライバー/ベルリン国立歌劇場管弦楽団
1927年 ベルリン

ワーグナー/楽劇「ワルキューレ」~ワルキューレの騎行
ハンス・クナッパーツブッシュ/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
1928年 ベルリン

プフィッツナー/歌劇「心」~愛のメロディ
ハンス・プフィッツナー/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
1932年 ベルリン

ウェーバー/歌劇「魔弾の射手」序曲
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
1935年 ベルリン

レスピーギ/交響詩「ローマの祭り」~チルチェンセス
ヴィクトル・デ・サバータ/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
1939年4月 ベルリン

ニコライ/歌劇「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲
パウル・ファン・ケンペン/ベルリン国立歌劇場管弦楽団
1939年 ベルリン

R・シュトラウス/日本建国2600年祝典序曲OP84
リヒャルト・シュトラウス/バイエルン国立管弦楽団
1940年 ミュンヘン

J・シュトラウスⅡ/喜歌劇「ジプシー男爵」序曲
ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
1942年10月21日 ベルリン
マルセル・ポート/アレグロ・シンフォニエッタ
カール・シューリヒト/ベルリン市立O
1943年3月? ベルリン


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CD-3 協奏曲録音

バッハ/ブランデンブルク協奏曲第5番~第1楽章
フリードリヒ・トーマス(フルート)
ジークフリート・ボリース(ヴァイオリン)
フランツ・ルップ(チェンバロ)
アロイス・メリヒャル/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
1934年11月21日 ベルリン

ストラヴィンスキー/ヴァイオリン協奏曲ニ調
サミュエル・ドゥシュキン(ヴァイオリン)
イーゴル・ストラヴィンスキー/ラムルー管弦楽団
1935年 パリ

ブラームス/ピアノ協奏曲第2番~第3楽章
エリー・ナイ(ピアノ)
ティボール・デ・マヒュラ(チェロ独奏)
マックス・フィードラー/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
1939年 ベルリン

モーツァルト/コンサート・ロンドK382
ヴィルヘルム・ケンプ(ピアノ)
パウル・ファン・ケンペン/ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団
1941年 ベルリン

シューマン/チェロ協奏曲OP129~第3楽章
エンリコ・マイナルディ(チェロ)
パウル・ファン・ケンペン/ベルリン国立歌劇場管弦楽団
1942年 ベルリン

シベリウス/ヴァイオリン協奏曲OP47~第3楽章
アニヤ・イグナティウス(ヴァイオリン)
アルマス・ヤルネフェルト/ベルリン市立管弦楽団
1943年1月26日 ベルリン


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CD-4 ソロ・室内楽録音

ヒンデミット/弦楽三重奏曲第1番OP34~第1楽章
アマル=ヒンデミット・トリオ
ヴァルター・カスパル(ヴァイオリン)
パウル・ヒンデミット(ヴィオラ)
ルドルフ・ヒンデミット(チェロ)
1927年 ベルリン

ワーグナー(ウィルヘルミ編)/アルバムの一葉
ゲオルク・クーレンカンプ(ヴァイオリン)
フランツ・ルップ(ピアノ)
1935年 ベルリン

ドビュッシー/小組曲~メヌエット
ゲオルク・クーレンカンプ(ヴァイオリン)
フランツ・ルップ(ピアノ)
1935年 ベルリン

バッハ/目覚めよと呼ぶ声ありBWV140
ヴィルヘルム・ケンプ(ピアノ)
1936年 ベルリン

パガニーニ/うつろな恋(ネル・コル・ビウ)による変奏曲
ヴァーシャ・プシホダ(ヴァイオリン)
オットー・A・グレーフ(ピアノ)
1938年3月18日 ベルリン

スメタナ/わが祖国より
ヴァーシャ・プシホダ(ヴァイオリン)
オットー・A・グレーフ(ピアノ)
1938年8月23日 ベルリン

シューベルト/12のドイツ舞曲D790
エドゥアルト・エルトマン(ピアノ)
1940年11月 ベルリン

シューマン/交響的練習曲OP13
ゲザ・アンダ
1943年 ベルリン

バッハ/トッカータとフーガニ短調BWV565
ヘルッムート・ヴァルヒャ(オルガン)
1947年8月24日 リューベック、聖ヤコブ教会


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CD-5 モーツァルト/レクイエム他

モーツァルト/レクイエムK626
ティラ・ブリーム(ソプラノ)
ゲルトルート・フライムート(アルト)
ヴァルター・ルートヴィッヒ(テノール)
フレート・ドリッセン(バス)
ブルーノ・キッテル/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ブルーノ・キッテル合唱団
1941年 ベルリン

バッハ/マタイ受難曲BWV244~終結合唱「涙ながらに跪き」
ブルーノ・キッテル/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ブルーノ・キッテル合唱団
1942年8月24日 ベルリン

ブラームス/静かなる夜に
カール・シュトラウベ/ライプツィヒ聖トーマス教会合唱団
1930年 ベルリン

作曲者不詳(フックス編)/おさなごキリストの子守歌
ギュンター・ラミン/ライプツィヒ聖トーマス教会合唱団
1940年5月6日 ベルリン

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

名盤コレクション112 ドヴォルザーク/後期3大交響曲(セル/クリーヴランドO)

ドヴォルザークの交響曲は全9曲だが、この番号が確定したのは比較的最近のことである。
チャイコフスキーの場合は全6曲で、前半3曲と後半3曲のポピュラリティには歴然とした差があるので、後期3大交響曲と言っても間違いない。
ドヴォルザークの場合は9番の知名度が圧倒的に高く、8番がそれに次ぐが、7番となると急に知名度が落ちるため、後期3大交響曲といういい方はしないようだが、ここではあえてそういう書き方をする。
セルは1960年前後にこの3曲を録音しており、いずれも名演。現在は2枚組で3曲が入ったCDがある。余白に入ったスメタナも聴きものである。

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交響曲第7番ニ短調OP70
ジョージ・セル/クリーヴランド管弦楽団
1960年3月18~19日録音

第7番は1884年から1885年にかけて作曲された。
前年の1883年にブラームスの交響曲第3番の初演を聴いて影響を受けた可能性が指摘されている。
そのためか、ブラームス的な重厚さが感じられる曲となっている。
それほど多くの録音を聴いたわけではないが、セルによる演奏は決定盤と言っていいだろう。


交響曲第8番ト長調OP88
ジョージ・セル/クリーヴランド管弦楽団
1958年10月24日~11月1日録音

1889年に作曲された。
9番ほどの知名度はないが、9番より高く評価する人も多い。
美しいメロディが印象的な第3楽章、華やかな演奏効果の第4楽章が印象深い。
稀代のメロディメーカー、ドヴォルザークの面目躍如といった作品である。
以前は「イギリス」というニックネームで知られていたが、これはイギリスで出版されたという些細な理由からで、現在はほとんど使われない。


交響曲第9番ホ短調OP95「新世界より」
ジョージ・セル/クリーヴランド管弦楽団
1959年3月20日~21日録音

アメリカ滞在中の1893年に作曲された最後の交響曲。
アメリカ滞在は3年間だったが、「新世界」の他、弦楽四重奏曲「アメリカ」やチェロ協奏曲という傑作を書いた。実り多い滞在だったと言えるだろう。
「新世界より」というタイトルは、新世界アメリカから祖国ボヘミアに向けたメッセージという意味合いがあるとされる。
私が聴き始めたころは、交響曲といえば「運命」「未完成」「悲愴」「新世界」が最もポピュラリテイが高かったが、今でもそんなに変わらないかも知れない。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

名盤コレクション111 マーラー/さすらう若人の歌(フィッシャー=ディースカウ、フルトヴェングラー/フィルハーモニアO)

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マーラー/さすらう若人の歌
 第1曲 彼女の婚礼の日は
 第2曲 朝の野辺を歩けば
 第3曲 僕の胸の中には燃える剣が
 第4曲 彼女の青い目が

ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー/フィルハーモニア管弦楽団
録音:1952年6月24~25日

よく知られている通り、フルトヴェングラーにはマーラーの交響曲の録音はない。
ただ、これは録音が残っていないだけであって、演奏されていないわけではないことには注意を要する。
フルトヴェングラーによるマーラー録音は、「さすらう若人の歌」だけだが、3種類存在するのは興味深い。
 1 ウィーン・フィル、F=ディースカウ 1951年8月19日 ザルツブルグ音楽祭(ライヴ)
 2 フィルハーモニアO、F=ディースカウ 1952年6月24~25日 ロンドン(スタジオ録音)
 3 ウィーン・フィル、アルフレート・ペル 1952年11月30日 ウィーン(ライヴ)

フルトヴェングラーは、51年のザルツブルグ音楽祭でのライヴ録音の際にフィッシャー=ディースカウにマーラーの音楽の美しさを教えられたと語っている。
フルトヴェングラー65歳、フィッシャー=ディースカウは弱冠26歳の若者だった。
天下の大指揮者にそこまで言わせたフィッシャー=ディースカウも凄いが、フルトヴェングラーの謙虚さも偉いと思う。
この時の録音がきっかけで、翌年のスタジオ録音につながることになる。
その5か月後にも取り上げていることから考えると、余程この曲が気に入ったのだろう。ついでに交響曲も録音してくれるとよかったのだが。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

名盤コレクション110 グリーク/ピアノ協奏曲(リパッティ、ガリェラ/フィルハーモニアO)

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グリーク/ピアノ協奏曲
ディヌ・リパッティ(ピアノ)
アルチェオ・ガリェラ/フィルハーモニア管弦楽団
録音:1947年9月18~19日

グリークのピアノ協奏曲は、1868年、作曲者25歳の時に書かれた。初期の代表的作品と言える。
グリークの作品の中でも人気が高く、ロマン派のピアノ協奏曲の中でも特に人気があるが、個人的にはそれほど好きではない。
誰でも知っている冒頭のフレーズだが、やっぱりシューマンのピアノ協奏曲に酷似しているし、グリークとしては外連味がありすぎの感じがしなくもない。
そもそもグリークの本領は、北欧的叙情にあふれた歌曲やピアノ曲にあると思う。
だからこそ、確かなテクニックと揺るぎない表現力の中に、叙情性をたたえたリパッティの演奏に惹かれるのである。
リパッティ30歳の演奏。1947年という年は、良い薬が効いて体調が良かったのだろう。比較的多くの録音が行われている。
残念なことに、最後の演奏会までは3年しか残されていない。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

名盤コレクション109 マーラー/交響曲「大地の歌」(バーンスタイン/VPO)

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マーラー/交響曲「大地の歌」
レナード・バーンスタイン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)
ジェームス・キング(テノール)
1966年6月録音

「大地の歌」は、全6楽章。
奇数楽章を男声、偶数楽章は女声の独唱が入る。
偶数楽章は男声でも良いとされているが、実際の録音は少ない。
フィッシャー=ディースカウを起用したバーンスタイン盤は、男声によるものでは決定盤と言えるものだろう。
というか、他の男性歌手による録音は知らない。F=D以外の歌手ではどうにも様にならないような気がする。そのあたりはさすがである。
バーンスタインは、ニューヨークフィルによる60年代の全集、3つのオケを振り分けた80年代の全集でも「大地の歌」は録音していない。
交響曲という扱いではなく、あくまでも連作歌曲集という考え方なのかも知れない。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

名盤コレクション107、108 ペルゴレージ/スターバト・マーテル(アバド盤、ホグウッド盤)

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ペルゴレージ/スターバト・マーテル

クラウディオ・アバド/ロンドン交響楽団員
マーガレット・マーシャル(ソプラノ)
ルチア・ヴァレンティーニ・テッラーニ(アルト)
レスリー・ピアソン(オルガン)
1983年録音


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ペルゴレージ/スターバト・マーテル
ペルゴレージ/サルヴェ・レジナ ハ短調

クリストファー・ホグウッド/アカデミー・オブ・エンシェント・ミュージック
エマ・カークビー(ソプラノ)
ジェームス・ボウマン(カウンター・テノール)
1988年録音


ジョヴァンニ・バッティスタ・ペルゴレージ(1710-1736)は、著名な作曲家の中ではリリ・ブーランジェと並んで、最も短命の作曲家と言えるだろう。
わずか26年と言う短い生涯だったが、死後急速に高まった名声にあやかってか、その作品とされているものの実に8割ほどが偽作であると言う。
ペルゴレージの作品の中では、イタリア・オペラの歴史に大きな転換点を与えたとされる傑作「奥様女中」と、恐らく最後の作品とされる「スターバト・マーテル」が特に有名である。

「スターバト・マーテル」(悲しみの聖母)の詩は、十字架の傍らに佇む聖母マリアの悲しみを歌ったもので、13世紀に作られたものであるとされている。
多くの作曲家によって書かれ、名作が多いが、ペルゴレージの作品は中でも傑作とされる。

アバド盤はロンドン響の弦楽奏者23人によって演奏されたもので、独唱者もベストと言え、この時代では決定盤だったように思う。
その後、オリジナル楽器による演奏が多く出たが、ホグウッド盤はその代表的な名盤と言えるだろう。ここではアルトではなく、カウンターテノールを起用している。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

名盤コレクション106 バッハ/ブランデンブルク協奏曲全曲(レオンハルト指揮)

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バッハ/ブランデンブルク協奏曲全曲

ブランデンブルク協奏曲第1番ヘ長調BWV1046
ブランデンブルク協奏曲第2番ヘ長調BWV1047
ブランデンブルク協奏曲第3番ト長調BWV1048
ブランデンブルク協奏曲第4番ト長調BWV1049
ブランデンブルク協奏曲第5番ニ長調BWV1050
ブランデンブルク協奏曲第6番変ロ長調BWV1051

シギスヴァルト・クイケン(バロック・ヴィオリーノ・ピッコロ、ヴァイオリン、ヴィオラ)
ルシー・ファン・ダール(バロック・ヴァイオリン&ヴィオラ)
アンナー・ビルスマ(バロック・チェロ)
ヴィーラント・クイケン(バロック・チェロ、ヴィオラ・ダ・ガンバ)
アンソニー・ウッドロウ(ヴィオローネ)
クロード・リッパース(バロック・トランペット)
フランス・ブリュッヘン(ブロックフレーテ、フラウト・トラヴェルソ)
パウル・ドンブレヒト(バロック・オーボエ)
アブ・コスター(ナチュラル・ホルン)
ボブ・ヴァン・アスペレン(チェンバロ)他
グスタフ・レオンハルト(指揮、チェンバロ)

録音
第1番 1976年12月
第2番 1977年6月
第3番 1976年7月
第4番 1977年3月
第5番 1976年1月
第6番 1976年7月


ブランデンブルク協奏曲は、6曲からなる合奏協奏曲集である。ブランデンブルク辺境伯クリスティアン・ルートヴィッヒに献呈されたためにこの名があるが、自筆譜には単に「いくつもの楽器による6つの協奏曲」とあるだけである。
素っ気無い表記だが、驚くほど多彩な魅力が詰まったこの曲集の性格を図らずも言い当てているようにも感じられる。
作曲の過程は明らかではないが、かなり長い期間に渡って創作されたものを、6曲にまとめたものだろうと言われている。
作曲の動機に関しては、一種の就職活動だったのだろうと考えられている。自分には何でも出来るという、売り込みだろう。
6曲はそれぞれ多彩な魅力で彩られている。特にチェンバロを主役に据えた、この時代としては画期的な5番と、ヴァイオリンを欠く弦楽合奏と言う意表を突いた6番がユニークである。

1970年代、オリジナル楽器の大家を総動員して行われた録音で、この方面のひとつの規範となりうるもの。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

名盤コレクション105 バッハ/管弦楽組曲全集(ガーディナー/イングリッシュ・バロック・ソロイスツ)

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バッハ/管弦楽組曲全集
ジョン・エリオット・ガーディナー/イングリッシュ・バロック・ソロイスツ
1983年録音

管弦楽組曲第1番ハ長調BWV1066
 序曲
 クーラント
 ガヴォット1&2
 フォルラーヌ
 メヌエット1&2
 ブーレ1&2
 パスピエ1&2

コラール「エホバよ、私はあなたに向かって歌います」BWV299

管弦楽組曲第2番ロ短調BWV1067
 序曲
 ロンドー
 サラバンド
 ブーレ1&2
 ポロネーズ ドゥーブル
 メヌエット
 バディヌリ

管弦楽組曲第3番ニ長調BWV1068
 序曲
 エア
 ガヴォット1&2
 ブーレ
 ジーグ

管弦楽組曲第4番ニ長調BWV1069
 序曲
 ブーレ1&2
 ガヴォット
 メヌエット1&2
 レジュイサンス

音楽の二大先進国と言えば、いつの時代もイタリアとフランスだった。
18世紀のドイツでは、そのイタリアとフランスの音楽を取り入れながら、ドイツ的な要素を加え、独自の様式を確立しようとした。
バッハも例外ではなく、例えばクラヴィーア作品では、イタリア風の協奏曲様式を取り入れた「イタリア協奏曲」、フランス風の序曲様式を取り入れた「フランス風序曲」によく表れている。
管弦楽作品では、ブランデンブルク協奏曲と管弦楽組曲に結実したと言っていいだろう。

管弦楽組曲は、フランス風の序曲にさまざまな様式の舞曲を組み合わせたものだが、冒頭の「序曲」が最も規模が大きく、重要であることから、原曲のタイトルは(ジャケット写真にもある通り)単に「序曲」という。
全部で5曲あるが、第5番は偽作とされており、通常は4曲で全集とされる。
ガーディナーの演奏では、第1番のあとに、4声のコラール「エホバよ、私はあなたに向かって歌います」BWV299が演奏されているが、これは「パスピエ」と非常によく似た音楽で、どちらか一方が他方の原曲になっているのだろう。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

名盤コレクション104 シューマン/アダージョとアレグロ(ブレイン、ムーア)

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シューマン/アダージョとアレグロ変イ長調OP70
デニス・ブレイン(ホルン)
ジェラルド・ムーア(ピアノ)
1952年4月22日録音

アダージョとアレグロは、シューマンが1849年に作曲した室内楽曲。
原曲はホルンとピアノのため作品だが、作曲者自身によりチェロ、あるいはヴァイオリンのための楽譜も残されているほか、さまざまな楽器のために編曲されているようだ。
ホルンのための室内楽曲としては、ブラームスのホルン・トリオとともに貴重である。
1957年に、36歳の若さで死去した天才デニス・ブレインの演奏が、2曲とも残ったのはせめてもの救いだ。

名伴奏者のジェラルド・ムーアがピアノを弾いているのも注目。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

名盤コレクション103 ブラームス/ドイツ・レクイエム(カラヤン/BPO)

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ブラームス/ドイツ・レクイエム
ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団・ウィーン楽友協会合唱団
ソプラノ:アンナ・トモワ・シントウ
バリトン:ヨセ・ファン・ダム
録音:1976年9月~10月

「ドイツ・レクイエム」は1868年に完成した、オーケストラと合唱、ソプラノとバリトンの独唱による宗教作品。
全7曲で構成される。

第1曲「幸いなるかな、悲しみを抱くものは」
第2曲「肉はみな、草のごとく」
第3曲「主よ、知らしめたまえ」
第4曲「いかに愛するべきかな、汝のいますところは、万軍の主よ」
第5曲「汝らも今は憂いあり」
第6曲「われらここには、とこしえの地なくして」
第7曲「幸いなるかな、死人のうち、主にありて死ぬものは」

通常、レクイエムは死者の安息を神に祈る典礼音楽で、ラテン語のテキストによる。世に三大レクイエムと呼ばれるモーツァルト、ヴェルディ、フォーレの各作品とも同様である。(ただし、細部は異なる)
一方、「ドイツ・レクイエム」はドイツ語で歌われる。
これはラテン語の展礼文をドイツ語に訳したわけではなく、ブラームス自身が聖書から選んだ章句を歌詞としたものである。そのため「ドイツ・レクイエム」の意味するところは、「ドイツ語の歌詞によるレクイエム」ということになる。

全曲が初演される2年前、1867年に第1曲から第3曲までの演奏が行われたが不評だった。
1868年、第5曲を除く6曲が演奏され、今度は成功を収めた。この時にはヘンデルの「メサイア」から「私は知る、私を贖う者は生きておられる」(第3部冒頭の曲)が演奏されたが、ブラームスはこれに触発されて第5曲を作曲したと言われている。
全曲の初演は1869年に行われた。

カラヤンは「ドイツ・レクイエム」を好んで取り上げており、映像も含めて7種類ほどあるようだ。
非常にドラマティックで美しい演奏。ベルリンフィルの演奏も素晴らしい。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

名盤コレクション102 ブルックナー/交響曲第5番(ヴァント/BPO)

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ブルックナー/交響曲第5番
ギュンター・ヴァント/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1996年1月12~14日

ギュンター・ヴァントは1912年生まれなので84歳の録音ということになる。(2002年、90歳で死去)
第5番は3回目の録音。
ライナーノーツを書いている宇野功芳も、第5番のベストと絶賛している。

このCDには、各トラックに細かい楽曲分析に基づくINDEXが入っている。
INDEX表示が出来ない場合は、ラップタイムを見ればわかるようになっていて、曲の細かい構造がわかるようになっている。
発売当初のCDプレーヤーにはINDEX表示が出来るものがあったが、今もあるのだろうか。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

名盤コレクション101 ヘンデル/合奏協奏曲OP6他(ピノック/イングリッシュ・コンサート)

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ヘンデル/合奏協奏曲OP6他

合奏協奏曲第1番ト長調HWV319
合奏協奏曲第2番ヘ長調HWV320
合奏協奏曲第3番ホ短調HWV321
合奏協奏曲第4番イ短調HWV322
合奏協奏曲第5番ニ長調HWV323
合奏協奏曲第6番ト短調HWV324
合奏協奏曲第7番変ロ長調HWV325
合奏協奏曲第8番ハ短調HWV326
合奏協奏曲第9番ヘ長調HWV327
合奏協奏曲第10番ニ短調HWV328
合奏協奏曲第11番イ長調HWV329
合奏協奏曲第12番ロ短調HWV330
 以上、1981年1、7月、1982年2月録音

合奏協奏曲ハ長調HWV318「アレクサンダーの饗宴」
 1984年6、9月録音

2つの合奏体のための協奏曲第2番ヘ長調HWV333
2つの合奏体のための協奏曲第3番ヘ長調HWV334
 以上、1984年8月録音

トレヴァー・ピノック(指揮とチェンバロ)/イングリッシュ・コンサート
サイモン・スタンデイジ、エリザベス・ウィルコック(ヴァイオリン)
アントニー・プリース(チェロ)


バッハとヘンデルはともに1685年生まれだが、その4年前に生まれたのがテレマンである。
この時代の3大作曲家と言える3人だが、生前の評価は
 テレマン>ヘンデル>バッハ
であり、今の評価とは逆である。
テレマンはクラシックの作曲家では最も多作で、4000曲もの作品を残したらしいが、作品数が余りに多く、その全貌は全くわからない。
バッハは同時代人には時代遅れの作曲家とみなされたが、シューマンやメンデルスゾーンによって再評価され、その真価が知られるようになって評価が逆転した。
ヘンデルは存命中も死後も一貫して高評価を受けた作曲家だが、バッハが偉大すぎるのか、現在ではやや過小評価に過ぎると思う。

ヘンデルの合奏協奏曲作品6は、器楽作品におけるヘンデルの最高傑作と言われている。
作品6というと、若書きの作品のように聞こえるが、作曲されたのは1737年。ヘンデル52歳の作品で、「メサイア」の2年前に当る。円熟期の作品と言って良い。

協奏曲というと、一般にソロ楽器とオーケストラのための協奏曲を連想するが、合奏協奏曲はバロック時代に成立した形式で、それぞれ複数の奏者による2つのグループによって演奏される形式である。通常、「コンチェルティーノ」と呼ばれる小グループと、「リピエーノ」と呼ばれる大グループによって演奏される。
近年は訳さずに「コンチェルト・グロッソ」と称することも多い。
合奏協奏曲の最初の有名な作曲家はアルカンジェロ・コレッリだが、その後ヘンデルが作品6としてまとめられている12曲の合奏協奏曲を書いたほか、管楽器を用いてリピエーノを拡大させ作品も残している。
バッハのブランデンブルク協奏曲(全6曲)も、合奏協奏曲の形式と考えることが出来る。
ブランデンブルク協奏曲とヘンデルの作品6は、この分野での2大傑作と言っていいかも知れないが、作風には大きな違いがある。
バッハの作品は、楽器編成や楽章構成も全て異なり、驚くべき多様性を見せる。これは言わばバッハの作曲能力を示すカタログのようなもので、「自分には何でも出来る」という自負のようなものが感じられる。
一方ヘンデルの12曲にはそこまでの多様性はないが、その楽想の豊かさには比類がない。稀代のメロディメーカーでもあるヘンデルの面目躍如たる作品である。ヘンデルはこの12曲をわずか1ヶ月ほどで書き上げた。速筆で知られるヘンデルならではの技だろう。ちなみに「メサイア」は24日間で作曲されたと言う。にわかには信じられないスピードだ。

合奏協奏曲「アレクサンダーの饗宴」は、作品6の前年に書かれた作品で、同名のオラトリオの幕間に演奏された。
2つの合奏体のための協奏曲は、2つの管楽器群を加えたもので、実際には3つの合奏体から構成されている。
第2番の第3楽章は、「メサイア」の中の”Lift Up Your Heads”のメロディーが使われているが、他の楽章も別のオラトリオからのメロディーが使われているようだ。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

名盤コレクション100 マーラー/リュッケルトの詩による3つの歌(フェリアー、ワルター/VPO)

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マーラー/リュッケルトの詩による3つの歌
カスリーン・フェリアー(コントラルト)
ブルーノ・ワルター/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
1952年5月14~20日録音

リュッケルト歌曲集より
 私はこの世に見捨てられ
 私は仄かな香りを吸い込んだ
 真夜中に

リュッケルト歌曲集は、1901年から1902年にかけて作曲された。
以下の5曲で構成されるが、特に演奏の順序に指定はない。
フェリアー/ワルターの演奏のように、数曲選んで演奏されることも多い。

1 私の歌を覗き見しないで
2 私は仄かな香りを吸い込んだ
3 私はこの世に見捨てられ
4 真夜中に
5 美しさゆえに愛するのなら

マーラーはその創作のほとんどを、交響曲と歌曲に当てたが、その2つはマーラーにとっては分かちがたく結びついており、他に類例のない独特な世界を作り出し、最終的に「大地の歌」に結実した。

短い時間ながら、いくつかの忘れられない録音を残したフェリアーとワルターの関係は、音楽の歴史の中でも特別な関係と言っていいだろう。
リュッケルト歌曲集は、フェリアーが40歳を迎えたばかりの時の名唱である。
無情なことに、わずか1年後に天に召されてしまうのである。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

名盤コレクション98、99 シベリウス/ヴァイオリン協奏曲

シベリウス/ヴァイオリン協奏曲

シベリウスは若い頃ヴァイオリニストを目指していたが、ステージに上がると極度に緊張する性格だった。そのため演奏家になることを断念し、作曲家に転向することになったのは、後世の我々にとって幸いだったと言える。
シベリウス唯一のヴァイオリン協奏曲は、1903年に作曲されたが、ブラームスのヴァイオリン協奏曲を聴いて、その交響的な表現に衝撃を受ける。
シベリウスは直ちに改訂に取りかかり、1905年に発表された。現在まで演奏されるのは専ら1905年の改訂版だが、一部に原典版の録音もあるようだ。

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ヤッシャ・ハイフェッツ(ヴァイオリン)
ワルター・ヘンドル/シカゴ交響楽団
1959年1月10、12日録音

ワルター・ヘンドルという人は、ハイフェッツのお気に入りの指揮者で、協奏曲の録音にはよくある「合わせ上手」なのだと思う。
これは専らハイフェッツの名人芸を聴くための盤と言えるだろう。


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ジネット・ヌヴー(ヴァイオリン)
ワルター・ジュスキント/フィルハーモニア管弦楽団
1945年11月21日録音

30歳で事故死したヌヴーには、協奏曲の録音はわずかしか残されていない。
ブラームスが4種類もあるのが目立っているが、その他にはベートーヴェンとシベリウスが残っているだけである。
シベリウスの協奏曲は、その中でも名盤と言っていいだろう。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

名盤コレクション97 ブルックナー/交響曲第9番(シューリヒト/VPO)

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ブルックナー/交響曲第9番
カール・シューリヒト/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
1961年11月録音

ブルックナーを聴くことが増えたのは、コロナ禍と無縁ではないと思う。
こういう状況では、ショスタコーヴィッチを聴く気にはなれない。
マーラーにもなかなか手が伸びなくなった。マーラーの音楽は心をざわつかせるからだ。
そこに行くと、ブルックナーの音楽は心を落ち着かせてくれるということがよくわかった。
もちろん、どちらがいいとか悪いとかいう話ではない。

ブルックナーの交響曲第9番は、第8番と並んで作曲者の最高傑作であるばかりではなく、交響曲の歴史の中でも最大級の傑作と言って良い。
これは考えると大変なことだ。第9番は未完成の作品だからである。

モーツァルトの「レクイエム」とは異なり、第4楽章のスケッチはかなりの部分が完成されていて、復元版も複数録音されている。
ただ、聴き慣れないせいか、いまひとつしっくりしない。
やっぱり3楽章のアダージョまでの完成度が高い。変な表現だが。
第2楽章スケルツォ、第3楽章アダージョだから良かったのである。
9番のスケルツォは非常にユニークな音楽だが、これで終わってしまうと中途半端な印象は否めない。
第2楽章スケルツォ、第3楽章アダージョというパターンは、ベートーヴェンの9番に起源を求めることが出来る。ブルックナーも8番で採用して成功したので、9番でもそうしたのかも知れない。
このおかげで、天国的なアダージョで終えることが出来た。マーラーの9番との類似性が指摘される所以である。

9番は特に好きな曲で、名盤も多いが、定番のシューリヒトを選んだ。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

名盤コレクション96 ブルックナー/交響曲第8番(朝比奈隆/大阪フィル)

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ブルックナー/交響曲第8番(ハース版)
朝比奈隆/大阪フィルハーモニー交響楽団
1994年7月24日、東京サントリーホールでのライヴ録音

自分のように1970年代ごろから聴き始めた人は、大なり小なり音楽評論家宇野功芳の影響を受けている可能性がある。
宇野功芳の評論は、その断定的な口調と独特の言い回しからファンも多かったが、時には揶揄や嘲笑の対象にもなった。
特にブルックナーの音楽に関しては、ハンス・クナッパーツブッシュ、カール・シューリヒト、ロヴロ・フォン・マタチッチ、朝比奈隆の4人が最高であると主張し続けた。
その4人に注目したのは慧眼であるとは思う。宇野の評論がなかったら、その4人が現在ほどの人気と知名度を維持することはなかっただろう。
大指揮者クナッパーツブッシュにしても、録音嫌いのために聴けるレコードが限られ、しかも主なレパートリーがとっつきにくいワーグナーとブルックナーなのだから。
反面、その4人を持ち上げる余り、他の演奏は認めないかのような姿勢は批判を浴びた。宇野の評論は功罪半ばと言ったところだろう。
ただ、その4人のブルックナーを聴くと、宇野が言いたかったこともわかるような気もする。
特に朝比奈隆と大阪フィルをここまで支持し続けたのは大きな功績だと思う。
この8番のライヴを聴く時、世界的に見ればかなりローカルなコンビがここまでの高みに達したことは奇跡に近いと思う。

当録音は、終演後の拍手とカーテンコールが13分も収録されている。
楽章間のインターバルもノーカットで収録されているため、実際にコンサートホールにいるような臨場感がある。
そのため、終演後の拍手まで含めて101分という、長時間収録になっている。
ライナーノーツを書いているのは、お約束の宇野功芳で、当然のことながら絶賛している。
ただし、宇野功芳は提灯記事は書かなかった。ライナーノーツの中で批判することもあった。


余談だが、宇野功芳が漫談家牧野周一の長男であったことを、最近になって知った。
もっとも、最近の人は牧野周一を知らないだろう。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

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