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カモ類の雑種についての考察-餌付け問題に関して



最も餌付けを受けやすい、オナガガモ♂
(写真は本文と直接の関係はありません)


鳥類画家、氏原巨雄氏のブログにこんな記事があった。
http://redshank2.exblog.jp/10329768/

「過剰な餌付けによって、繁殖期まで居残るカモが増え、その結果として多くの雑種が生まれている」という説はここ数年でかなり広まってしまったが、本当にそうか?
私もこのことに関しては思うところがあるので、素人ながらちょっとまとめてみたいと思う。
問題点は3つ
(1)カモの雑種は、言われているほど多いのか?
(2)餌付けと雑種には本当に関連があるのか?
(3)餌付け自体に、それほど問題があるのか?

上のブログで紹介されている記事の出典はこれ
http://www.nationalgeographic.co.jp/animals/special_article.php?special_topic_id=1&episode_no=5
プロナチュラリスト、佐々木洋氏による記事の要旨
東京都心部には多くの野鳥が生息しているが、それらの中には雑種の鳥が見られる。
2007年4月には、ハクセキレイとセグロセキレイの交雑個体と思われる野鳥を確認している。
カモ類の交雑は、マガモとカルガモ、ヒドリガモとアメリカヒドリの組み合わせを筆頭に多くの例がある。過去に不忍池でトモエガモとオナガガモの交雑個体などを目撃している。
それら雑種の個体数は、年々増加しているが、発見数が多いワースト3は、不忍池、石神井公園、浮間公園で、いずれも野鳥に餌をやる人が多い。
交雑が起きる理由は、繁殖地が近いため、両種が非常に近い間柄であるため、という理由のほか、日本における人間からの過剰な餌づけが考えられる。
本来は種類ごとに固まって冬を越しているはずなのだが、人間による過剰な餌やりによって、さまざまな種類のカモが狭い範囲に集中してしまい、種間交雑のチャンスが増えていると考えられる。
この記事は、巷間流布されている説をほぼ踏襲したものだ。
この説が流布するに当たって大きな力になったのが、2007年から始まった東京都の「餌やり防止キャンペーン」であることは言うまでもない。
その少し前にこういう新聞記事が出ている。

2007年3月15日 読売新聞の記事より抜粋
「マルガモ」と呼ばれるカモが東京に出現している。頭はマガモのオス特有の鮮やかな濃い緑色、嘴の一部や羽の色はカルガモそっくりだ。マガモとカルガモという2種類のカモが交雑してできた個体、それがマルガモだ。
不忍池や清澄庭園では、約10種類のカモがひしめき合い、マルガモを始めとするさまざまな雑種が生まれている。カルガモとヒドリガモ、マガモとオナガガモなど、組み合わせも多彩だ。日本野鳥の会東京支部が昨年行った調査では、都内で少なくとも29羽の交雑種が確認されている。

その後、東京都のキャンペーンに沿った多くの類似記事やテレビ報道と内容はほぼ同じである。
「メタボガモ」といういかにもマスコミ好みの用語も生まれ、一種の都市伝説になった。
この伝説は伝播するごとに大げさになり、
「交雑が進んで、今や純粋なカルガモは存在しない」
という言説までもが現れた。


問題点1 カモの雑種は言われているほど多いのか?

マガモとカルガモ、ヒドリガモとアメリカヒドリの雑種に関してはよく観察されている。
ただし、前者についてはマガモではなく、アヒルかアイガモである可能性が高い。
後者については近縁種であり、繁殖域もある程度重なっていることから、交雑が多いことは実際に観察されている。
ただしアメリカヒドリは、東京都内の公園で餌付けに群がるほど個体数はいない.
トモエガモとオナガガモの雑種も事実確認されているが、この両種も繁殖域が重なっているので、ある程度交雑があることは理解できる。
だが、少なくとも関東地方においては、トモエガモの個体数は少なく、餌付けされている可能性も少ないので、この組み合わせを餌付けのせいとするのは筋違いだろう。

また、前段で「ハクセキレイとセグロセキレイの交雑個体」という、少なくとも餌付けには関係ないと思われる例が出てくる。
写真がないので、交雑と判断された理由がよくわからないが、4月と言えば幼羽が観察される時期であり、これらの幼羽は紛らわしい個体が多い。

また読売新聞の記事中、カルガモとヒドリガモという注目すべき組み合わせが出ているが、実際に存在するかどうか疑わしい。
事実だとしても相当珍しい個体だと思う。

実際には、カモ類の雑種というのはほとんど観察されていないのではないかと思う。
唯一例外的なのはいわゆる「マルガモ」である。
この雑種については私も以前記事にしたこともあるので、若干責任を感じるのだが、これらの雑種のほとんどはマガモが関係したものではなく、アヒルかアイガモだろうと思われる。
その理由として、マガモとカルガモは繁殖域が異なり、殊更この組み合わせが多い事情は見当たらないのに、アヒル・アイガモは、通常公園などでカルガモと一緒に見かけることが多く、繁殖期も渡りをしない種類であるから、国内で雑種を作っても不自然ではないからである。
「マルガモ」を見かけるのは、アヒル・アイガモが多い都市部の公園であり、山奥の湖沼などではほとんど見かけないことからもそう判断して良いと思われる。
先の新聞記事にある「東京都内で29種」という数も、ほとんどがこれ(と、少数のヒドリとアメヒの雑種)だとすれば、別段不思議な数字ではない。


問題点2 餌付けと雑種には、本当に因果関係があるのか

この問題を考えるに当たって、予備知識として最低限必要だと思うのだが、カモ類が皆餌付けされやすいわけではない。
一般に餌付けを受けやすいカモは
オナガガモ、ヒドリガモ、ハシビロガモ、ホシハジロ、キンクロハジロ
の5種類である。(他にハクチョウ類、オオバン、ユリカモメがある)
これに対し、
マガモ、カルガモ、コガモ、ヨシガモ、オカヨシガモ
などはほとんど餌付けされない。

餌付けが雑種の原因であるのならば、
■上記オナガガモ以下の5種同士が繁殖期まで居残り、国内で異種間の繁殖をした証拠。
■オナガガモ以下の5種と、通常国内で繁殖するカルガモとの交雑。
のいずれかが相当数観察されるはずである。

結論から言うと、そのような雑種はほとんどいないに等しい。
ネット上を検索しても、そのような写真はほとんど出てこない。
雑種が多い証拠として引き合いに出されるのは、やはりマガモとカルガモの雑種である。


また、佐々木氏の記事の中には「カモ類は、本来は種類ごとにかたまって冬を越しているはず」
という記述。
上記の新聞記事にも「約10種類のカモがひしめき合い、マルガモを始めとするさまざまな雑種が生まれている。」
との記述がある。

これは通常カモ類を観察している立場から見ると、ちょっと首を傾げたくなる記述である。
私が通常観察している、茨城県内各地を例にとると
■霞ヶ浦(土浦市)
マガモ、ヒドリガモが圧倒的に多い。
カルガモ、コガモ、オナガガモ、ハシビロガモ、ヨシガモ、オカヨシガモが見られ、ミコアイサ、ホシハジロは少数。
9~10種類程度

■乙戸沼
ヒドリガモが圧倒的に多い。
オナガガモ、ハシビロガモ、ヨシガモ、オカヨシガモが比較的多い。
カルガモ、コガモ、ミコアイサ、ホシハジロは少数
マガモ、トモエガモ、アメリカヒドリ、スズガモが稀
9~13種類程度

■宍塚大池
マガモ、コガモが圧倒的。
ハシビロガモ、ヒドリガモ、カルガモ
トモエガモなど、その他は稀
ここは比較的種類が少なく、5~6種類

■涸沼
スズガモ、ホシハジロ、キンクロハジロ、カルガモが多い。
マガモ、コガモ、ヒドリガモ、ミコアイサ
稀にホオジロガモなど
8~9種類

以上のように、大体10種類程度が混じっているのが普通である。
餌付けを行うと、先に挙げたオナガガモ等が支配的になり、他のカモ類は逆に少数になる。
こういうことは、バードウォッチャーならば普通に観察していることであり、餌付けが雑種を生む原因になっているという説は相当無理があるように思われる。


問題点3 餌付けは本当に問題なのか

ここでひとつ紹介したいのは、「東アジア・オーストラリア地域渡り性水鳥重要生息地ネットワーク(ガンカモ類)支援・鳥類学研究者グループ:JOGAの第10回集会「ガンカモ類外来種の現状と対策及び今後の課題」の中で発表された、「新潟県瓢湖におけるカモ類の雑種についての報告」
である。

要旨
新潟県瓢湖には、毎冬ハクチョウ類約3500羽、カモ類約15000羽が渡来しているが、その中に種間雑種が現れた。
オナガガモとトモエガモの雑種は少なくともこれまでに4例、2007年にはヨシガモとヒドリガモの雑種が渡来した。
アヒルとカルガモの雑種3羽も観察された。これは当初マガモ×カルガモと考えていたが、細部を検討した結果、アヒルとの交雑である可能性が高いと判断された。
水原町では管理事務所が与える以外は給餌を禁止していたが、1995年から観光協会が販売する餌を自由に与えて良いこととした。
このことによって、一般見学者にはこれまで以上に親しまれるようになった反面、持参したパンなどを与える人が後を絶たず、ニワトリ、アイガモやアヒル、ガチョウなどが捨てられたり放されたりして来た。
瓢湖で繁殖するカルガモは少ないが、雄だけのアヒルはアイガモやカルガモの雌を求めて雑種を作る可能性が高く、こうした状況の中でアヒル×カルガモが生まれたものと考えられるが、アヒルやアイガモを放置しておくことは人工的に雑種を作ることを助長するものと考えられる。
この報告によれば、15000羽ものカモ類が越冬する瓢湖において、雑種と思われるカモは過去に数例観察されているに過ぎない。(ここでは餌付けが行われているにもかかわらず)
しかも、餌付けと関連づけることが出来そうな雑種は、ここでも「マルガモ」だけであり、冷静な観察によってアヒルとの雑種である可能性が指摘されている。

私は餌付けについて、全面的に肯定しているわけではないが、都市公園などで限定的に行われている行為について、そんなに目くじら立てて禁止するほどのものではないと考えている。
餌付けをするのは日本人だけではなく、ヨーロッパでも冬季の餌やりは普通に行われている。
むしろ上の報告にもあるように、家禽類の管理不十分にこそ問題があるように思える。
私のフィールドでも、アヒルやニワトリを捨てる人が後を絶たず、可哀相だからと餌をやる人がいて、その結果どんどん増え、そうなるとさらに捨てる人が出てくるなど、悪循環に陥っている。
そのような状況の中でアヒルとカルガモの雑種が見られるようになり、餌付け批判の波に乗って、餌付け主犯説が出てきたものと思われるが、その根拠はいずれも薄弱で見当違いと言わざるを得ない。
野鳥への餌付けに関しては、本当に野鳥にとって害があるのか、科学的に検証する必要があると思われるが、最近では鳥インフルエンザ対策の一環として餌付け禁止の方向に走る傾向が出てきたようだ。
言うまでもなく、鳥インフルエンザは深刻な問題であり、軽々に論ずることは出来ないが、論拠は変わっても「餌付け禁止」という方向だけが一方的に敷かれている状況に、何か納得できない気がしてならないのである。

変なニュースに突っ込みを入れる

メタボガモ報道に対して色々批判を加えてきました。
報道というのは、得てして言いっぱなしであとのフォローがないので、最近はあまり話題になりません。
間違った知識だけが流布して、そのあとはその「事実」が一人歩きしてしまう。
「UFO騒動」とか「血液型占い」のような例もあり、批判を加える側としては無力感や徒労感だけが残ります。
報道というものを鵜呑みにしてはいけない、むしろ報道する側が特定の人が言うことを鵜呑みにしてしまう傾向があるのだ、ということを今回の騒動で実感しました。

まあそれほど大それた話題ではないのですが、今日「yahooニュース」にこんな記事がありました。
”ポーランドの郵便配達、カタツムリよりも遅いと「実証」”
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080125-00000712-reu-ent
[ワルシャワ 24日 ロイター] ポーランドの郵便配達はカタツムリにも劣る遅さであることが「実証」された。IT関連の仕事に従事するMichal Szybalskiさんは、1月3日に速達扱いの手紙を受け取ったが、手紙が投函されたのは昨年12月20日。そこで、配達がどれほど遅いかを検証することにした。
 地元紙によると、Szybalskiさんは手紙が届くまでに要した時間を294時間、自宅と差出人との距離を11.1キロと算出、そこから手紙の届く速さが時速0.03775キロだったと割り出した。一方、カタツムリの「歩行速度」を測ったところ、時速約0.048キロだったという。

ヒマネタとして面白い記事ではありますが。。。
数字に敏感な人には引っかかるところがあるのでは?

実はこの記事の下に「カタツムリの体のしくみ」と題するHPへのリンクがあります。
http://www006.upp.so-net.ne.jp/maimai/htmpage/tukuri3.htm
このHPによれば、カタツムリの速度は時速約5mであると書いてあります。
それが正しければ、カタツムリの歩行速度は時速0.005キロとなり、Szybalskiさんの主張は一桁間違っていることになります。
ちょっと計算して見れば
 時速0.048km=秒速13.3mm=分速800mm
ですから、単純に考えても過大な数字です。カタツムリが1分間に80cmも移動できるとはとても思えません。
 時速0.005km=秒速1.4mm=分速83mm
あたりは妥当な数字でしょう。

こういう数字に関しては、私はすぐにピンと来るのですが、職業柄かも知れませんね。
数字(というか単位)に疎い人はこういうケタの間違いを犯しやすい傾向があります。
ちなみに、この記事では12/20に投函して1/3に届いたことになっていますが、それだと最低でもまる13日=312時間以上はかかっているはずで、294時間の根拠は意味不明です。

要するにかなりいい加減な記事で、普通こんなニュースを流したら笑われると思うのですが。
新聞とか通信社も、もう少し検証して書けばいいのに。(yahooも)
例の「メタボガモ報道」と似たようなことだと思うのです。

年末の不忍池にて

2007.12.29
不忍池(東京都台東区)

年末の休みに入った初日、「エサやり防止キャンペーン」が行われている現場に行ってみた。
年末ということもあるのか、特に見廻りの職員のような姿は見られなかった。
エサを蒔く人の姿はちらほら見られたが、それほど大々的に蒔いている人はいなかった。
その代わり、ユリカモメにエサをやっていた女性に向かって、傘を振り回しながら食ってかかるおじさんがいた。
その人は柵にかかっている張り紙を指して怒鳴っていた。
そのあと、おじさんは傘を振り回してユリカモメを追っ払っていた。
やれやれ。。。
何か、とてもギスギスした雰囲気で、居心地の悪い公園になってしまった。
東京都はここをどんな公園にしたいのか。



いくら何でもひどいだろうと思うのがこの張り紙である。
「エサやり防止」だったはずが、はっきりと「禁止」と歌っている。
これでは先ほどのおじさんのような”正義漢”が出現してもおかしくない。

この張り紙
どうにもこなれない文章なのはさておいて、
エサやりの弊害として、6項目挙げられている。

1.自分で餌を取る野生を失っていく。

これについては以前から言われていて、一般論としてはわからないでもないが、検証されているわけではない。
完全に人間に依存している家禽(アヒルなど)と野鳥を同列に論じるのは無理があると思うのだが。
餌付けを受けているカモたちも、春になるとちゃんと繁殖地に戻って行く。それは事実であり、短期間の餌付けで野生を失ってしまうなどということはない。
それは多くのバードウォッチャーの観察結果からも明らかである。

2.パンくずなどの餌による高カロリー摂取の蓄積で太り過ぎとなる。

右側の写真にも「太ったカモ」という説明がある。
これがこのキャンペーンで一番問題になった点だが、これまで何度も言ったように実際に確かめられたデータではない。「そういう話があった」「見た感じ、太っているように見える」などと言う極めて曖昧な根拠に基づいているらしいことが、徐々に明らかになって来た。
これもしつこいようだが、バードウォッチャーの目から見ると、写真のカモは全く普通の個体である。

3.行動が鈍くなり、猫などに襲われやすくなって、命を落として北へ帰れなくなる。

なかなかユニークな文章であるが、猫が野鳥を襲うことはよくあることである。
それより「猫を捨てないでください」と訴える方が本筋ではないか。

4.人を恐れず陸上を歩き回り、自転車などに轢かれやすくなる。

寡聞にして、カモが自転車に轢かれたというのは聞いたことがないが、右側の写真には「エサやりに群がったカモの群れに猛スピードの自転車が通り抜けたためショック死した」という驚くべき説明がある。
暴走自転車を取り締まるのが先なのでは??
カモよりもまず、歩行者を守るべきなのでは???

5.餌まきにより本来は河口附近に生息するユリカモメが多数飛来して餌を狙い、低空滑空をして、人を傷つけやすくなり危険が高まる。

ここでユリカモメに矛先が向けられ、あたかも危険な鳥であるかのような書き方になっている。
右側の写真には「餌取りが凶暴なユリカモメ」の表現があり、見過ごせない。
ユリカモメが多くの人を傷つけているのが本当ならば大問題であり、カモの太りすぎよりも後に来る話題ではないはずである。
ユリカモメに対する餌付けが行われている他の場所で、このような事実は全くない。
殊更ユリカモメを悪者に仕立てる意図が全くわからない。
なお、これも何度も言うようだが、不忍池は海から6キロしか離れておらず、遥かに内陸まで飛来するユリカモメがいるのは当然である。
この日、ユリカモメばかりでなく、ウミネコ、セグロカモメ、オオセグロカモメも観察できた。
セグロは別として、ウミネコとオオセグロは通常内陸までは来ない鳥である。

6.餌やユリカモメの糞で池が汚れる。

ここでも敢えてユリカモメの名前を出して糞害を訴えているのはなぜか。
この池を一番汚しているのは、ゴミや空き缶を捨てる人たちだと私は思うのだがどうだろうか。

「不忍池は羽休めの場所です」という記述も引っかかる。
ここは越冬地のはずである。
東京都は旅鳥の休憩地と見ているのだろうか。
越冬地ではないのに、餌やりのために越冬地になってしまっているという認識ならば、それは見当がはずれていると言わざるを得ない。

・・・・・・

東京都はこれ以上恥をさらす前に、こんな張り紙ははずした方がいい。
これがマスコミを通じて、全国に誤った知識を広めた罪は大きい。
「野鳥に対する過剰なエサやりは控えましょう」
東京都はせめてこれぐらいのキャンペーンにすべきだった。

「エサやり防止キャンペーン」批判

東京都による「エサやり防止キャンペーン」についてこれまで批判を加えて来たが、何度も言うように私は野鳥に対するエサやりを無条件に容認するわけではない。
ただ、荒唐無稽としか思えないことを、あたかも事実であるかのように捏造し、強権的に押さえ込もうとする行政当局の態度と、無批判かつ興味本位に伝えるだけのマスコミに怒りを覚えるのである。

・・・・・・

今回のキャンペーンを支えている”事実”は、「エサやりが原因でカモが太りすぎて、飛べないカモが多くなり、渡りに支障が出て来た。」というものであるが、これはほぼ100%事実無根で、荒唐無稽と言ってよい。
冷静に考えると笑い話のようであり、思うに鳥のことを知らない誰かが思いついた話か、アヒルを太ったカモと勘違いしたのか、はたまた悪質なデッチ上げか、どれかだろうと思う。
これがマスコミに乗ると”事実”になってしまう過程は、デマが広がる仕組みとして非常に興味深い。

このことを伝える新聞記事の内容が間違いだらけであることは以前の記事で指摘した。
以前の記事

私はテレビをあまり見ないので、これがどういう伝え方がされているのかはよく知らないが、伝聞によれば思ったとおりの報道であるらしい。
ネットで検索して見ると、テレビでの報道内容として「通常の1.5倍も体重が増えたカモ」と、具体的な数字が出て来た。
これは最初はなかった数字であり、これもデマが広がるときにはよくある現象で、デマに関する一種の研究対象になるかも知れない。

・・・・・・

今回のキャンペーンの特徴は「カモがかわいそうだ」という視点で語られていることである。
同じ「エサやり防止キャンペーン」でも、ドバトに対する同様のキャンペーンは、ドバトを減らそうというのが目的だったので、本質的に意味が違う。
行政が純粋にカモのことを心配してくれるなんていうことは信じられない。
このキャンペーンを胡散臭く感じる理由のひとつである。
カモに対するエサやり攻撃の副産物として、ユリカモメに対する誹謗中傷が非常に多いのは見過ごせない。
ユリカモメに子供が襲われた、という苦情が絶えないなどという話がどこから出て来たのか、本当に理解に苦しむ。

・・・・・・

カモの渡りが遅れている、ということの根拠に、4月になっても居座るカモが多い、というようなことが言われているらしいが、とんでもないことである。
4月に見られるカモなんて珍しくも何ともない。
以下は私の観察結果から抜粋したものである。

2004年
4/29 谷津干潟 オナガガモ ハシビロガモ ヒドリガモ
5/7 MF(土浦市内)コガモ 
5/8 谷津干潟 コガモ オナガガモ
5/12 宍塚大池 コガモ
5/21 宍塚大池 コガモ

2005年
4/24 浅川大池(長野県) マガモ コガモ キンクロハジロ
4/28 MF(土浦市内)コガモ 
4/30 谷津干潟 コガモ オナガガモ
5/7 裏磐梯高原 マガモ コガモ ヒドリガモ

2006年
4/28 宍塚大池 コガモ ハシビロガモ
4/29 谷津干潟 コガモ アメリカコガモ ヒドリガモ ハシビロガモ
5/12 MF(土浦市内)コガモ

2007年
4/27 宍塚大池 マガモ コガモ
4/28 三番瀬~谷津干潟 コガモ ヒドリガモ オナガガモ ハシビロガモ スズガモ

上に挙げた場所はいずれも餌付けがされていない場所である。
比較的遅くまでいるカモは、餌付けされないコガモが多いということは以前も書いた。
普通のバードウォッチャーならばこの程度の記録はすぐ出せるだろう。
東京都環境局には、残念ながら鳥を日常的に観察している人はいないようだ。
「渡りが遅くなっている」という主張が4月を基準に語られている限り、その論理は破綻しているといわざるを得ない。

・・・・・・

予期せぬ雑種が多く生まれているという主張も根拠がない。
カモというのは雑種が生じやすい種類であるが、東京都が言うように餌付けの影響で生じる雑種というのならば、
 カルガモとオナガガモ
 カルガモとヒドリガモ
などの雑種が多く観察できるのでなければ説得力がないが、このような個体は私の知る限り存在しない。
手元の図鑑にあるのは
 マガモとカルガモ
 マガモとオナガガモ
 トモエガモとオナガガモ
などの雑種である。
マガモとカルガモの雑種は俗にマルガモと呼ばれ、比較的多く見られるが、マガモではなくアヒルあるいはアイガモである可能性も高い。それならば国内で繁殖した可能性もある。
その他の組み合わせにしても、カモ類の繁殖地はほとんどが海外であり、餌付けが原因で国内(特に不忍池)で雑種が繁殖したと見られる証拠は何一つない。
この「雑種」に関する東京都の主張はほとんど意味不明である。
思うに東京都環境局の担当者はカモのことを全く知らず、アイガモの類いを野生のカモの雑種と勘違いしているのではないか。

以上、エサやり防止キャンペーンの欺瞞性について書いてきたが、集中キャンペーンとしては終了した模様である。
春になればいつものようにカモたちは渡っていくだろうし、夏まで居残るオナガガモはほとんどいないだろう。
東京都の主張が嘘であることは明らかになるが、その時には世間の関心はあるまい。
第一、東京都は「キャンペーンが功を奏して、カモたちが渡れないという状況は回避された」と言えるわけだから、私たちに勝ち目はないわけだ。
今後どのように推移するかは不透明だが、今年を代表する漢字のように<偽>に対しては<偽>と主張する姿勢は変えないつもりである。

・・・・・・

このキャンペーンに対する正当な批判は以下のブログにありますので、ぜひ読んでみてください。
氏原巨雄さんのブログ
氏原道昭さんのブログ

メタボなカモ、不忍池に蔓延???

「あまり深入りしたくはない」と言いながら、あまりに荒唐無稽な話が蔓延していることに黙っていられないので、もう少し書かせていただく。
というか、ツッコミどころが多すぎて書かずにはいられない、というのが現状だ。

下はスポニチに載った写真である。


”不忍池に飛来しているオナガガモ。“脂”がのってそうだ…。右下は通常のマガモ”
という説明があるが。。。

異なる種類の鳥を並べた時点で、比較写真としては落第だが、それはさて置いて。
何度も言うようだが、このぐらいの見え方はカモとしては普通である。
首を縮めた個体と伸ばした個体の写真を並べて、「こっちはこんなに太っている」という言い方を見ると、この新聞は読者をバカにしているとしか思えない。
裸の人とダウンジャケットを着た人の写真を並べて「こっちの人はデブだ」と言っているようなものだ。

ついでに言わせてもらうと、写真のサイズが小さくて判然としないのだが、「通常のマガモ」とある写真はカルガモではないか。少なくとも種類ぐらい調べてから出した方がよろしくないか?

オナガガモの太って見える写真を探しているのだったら是非私に声をかけて欲しかった。
いくらでも提供できたのに。
軽々と飛べる鳥なので申し訳ないのだが。。。


土浦市内で撮影

※なお、前後の記事抜きだと誤解を受ける恐れがあるので、ちょっとひとこと。
私は野鳥へのエサやりに対しては推進派ではなく、若干疑問を持っているところもあるが、少しぐらいなら問題ないのでは?という立場だ。
ただ巷間流布している、太ったカモが飛べない云々の荒唐無稽な報道を批判しているだけである。

鳥を馬鹿にするな!

あまりこのことに深入りしたくはないのだが、およそ根拠の薄弱なことを、さも事実であるかのように強弁する行政当局と、お役所の発表を検証もしないで提灯記事を書く新聞、ただ面白おかしく取り上げるだけで何も考えていないTVによって、「太りすぎで飛べないカモが急増」というデマが蔓延していることに我慢がならないので、しつこいと言われるのを覚悟で取り上げる。
一連の報道が、カモやユリカモメに対して失礼であるとしか思えないのである。
一言申し上げておく。
「鳥はそんなに馬鹿ではない」

まず、東京新聞12月5日
<肥満 飛べないカモ 野良ネコの餌食 渡りにも影響>
と題する記事。
東京都内で越冬するカモに「肥満」が増えている。太りすぎて動きが鈍くなり、ネコに簡単に襲われたり、飛べなくなって故郷に帰れなくなったりする深刻な例が続出しているという。原因は、人によるエサのやりすぎ。都環境局は、カモなど野鳥へのエサやりの自粛を大々的に呼び掛けることを決めた。

冬の渡り鳥の名所として知られる不忍池(台東区上野公園)ではここ数年、一、二月になると、丸々と太った鳥が目立ち、空腹の野良ネコにとっては文字通り、いい“かも”に。ネコに襲われた無残な死骸(しがい)が連日、見つかるという。

カモはもともと、低カロリーの水草などを主食にしている。年末くらいまでは軽快に飛び回っているが、人からパンや菓子といった栄養価の高いエサを与えられるうちに太り始め、動きも緩慢に。同局が撮影した今年初めのカモの写真では、胸や腹にたっぷりとぜい肉がついていた。

肥満は、故郷への渡りにも影響が出ているとみられている。具体的な調査はまだだが、同局の担当者は「太ったカモは動きが鈍く、簡単に素手で捕まえられる。こんな体で飛び立っても、故郷にたどりつけないのではないか」と心配している。

同局が今月三日、不忍池周辺で観察したところ、約千七百羽の野鳥を確認。このうち留鳥のオナガやカルガモを除く約五百羽が、冬季にシベリアなど北方から渡ってくるカモ類だった。冬の渡り鳥のユリカモメも、約六百羽がいた。

ユリカモメは本来、河口近くをすみかにする。不忍池では以前、ほとんど見られなかったが「エサ場を求め移動してきた」(同局)らしい。ユリカモメの場合、エサをもらうのを待つだけでなく、旋回して人から食べ物を奪おうとするために「子どもがけがをした」との苦情も絶えない。

都は今月八日から来年三月いっぱいにかけ、不忍池周辺でエサやりの危険を知らせるチラシを配るほか、練馬区の石神井公園や葛飾区の水元公園でも園内放送で訴える。担当者は「かわいいと思う気持ちから、エサやりを日課にしている人もいるが、逆にそれが、鳥を苦しめていることに気がついてほしい」と話している。
この記事は、東京都が言う主張をそのまま踏襲したものである。
”肥満が原因で飛べなくなり、渡れないカモがいる”
餌やりが原因で太りすぎたカモなんて見たことがない。
環境局配布のチラシにあるオナガガモの写真には「ほとんど飛べません」とあるが、どう見ても普通の個体である。
「太って見える」と言われればその通りだが、地上で立っているカモというのはこんなものだ。
このカモが本当に飛べないのかどうか、東京都環境局は検証したのか?
本当に飛べないのだとしたら、普通は怪我を疑ってみるべきで、餌やりのせいだとどうして判断できたのか。

”餌やりが原因でカモが太りすぎ、猫に簡単に襲われてしまう”
猫が野鳥を襲うことはよくあることである。
可哀想だが、それが自然界というものであり、動きの遅い鳥は淘汰されてしまうことがそれほど問題だとは思えない。
それより、カモに餌をやる人と猫を捨てる人はどちらが悪質なのか、環境局の人に聞いてみたい。

>留鳥のオナガやカルガモ、という記述を読むと、この記者がカモ科のオナガガモ(もちろん渡り鳥)とカラス科のオナガを混同していることがわかる。オナガは本題に全く関係がなく、オナガガモは本題の主役と思われるから、この記述は意味不明である。

”ユリカモメは河口近くに住み、不忍池では見られなかった”
以前の不忍池のことはよく知らないが、ユリカモメはカモメの仲間で最も内陸までやってくる鳥である。
不忍池は海(竹芝桟橋)から6kmしか離れておらず、とても内陸とは言えない。
鹿島灘から100km、東京湾から70km離れた群馬県の多々良沼にもユリカモメが多数飛来していることをご存知ないらしい。
大体、ユリカモメは万葉の時代から「都鳥」と呼ばれて親しまれてきた鳥で、東京都の鳥のはずである。
少なくとも東京新聞なのだから、恥ずかしい認識だと思った方が良い。

”ユリカモメが子供を襲うという苦情が絶えない”
これが本当ならば聞き捨てならない。
ユリカモメは人を恐れず、意外に気が強いので、ユリカモメに周りを囲まれて「怖い」という人はよくいる。
しかし、ユリカモメのせいでケガをする子供が続出しているというような話は聞いたことがない。
ヒッチコックの映画はフィクションである。勘違いしてはいけない。

続いては産経新聞12月9日付
<肥満のカモ、北へ帰れないカモ? 都が対策>
と題する記事
近年、カモの肥満が問題化している。日本で越冬中に丸々と太り、飛ぶ能力やエサを捕る能力が落ちて、繁殖地のシベリアにたどり着けずに死ぬ恐れがあるのだ。動きが鈍く警戒心も薄れて、ネコに食べられるカモも多く見られるようになったといい、東京都は8日、野鳥へのエサやり防止キャンペーンを始めた。
(菊地剛)

「エサをやる姿は一見ほほえましいですが、実は生態系を壊しています」。都の担当者はこう訴える。

東京・上野の不忍池には毎年11月ころ、多くの渡り鳥が越冬のために飛来。今年もオナガガモやキンクロハジロなど、約1100羽を確認した。ところが、いとおしむあまり、人がエサを与えてしまうことが問題になっている。

「パンなどを食べて太り過ぎると、春に北へ帰れなくなるんです」と担当者。カモにも脱メタボが必要とこの日、都の職員12人が不忍池周辺でエサをやっている人に声をかけたり、チラシを配るなどして「野鳥にエサをやらず、自然のまま見守って」と訴えた。

エサの食べ過ぎがもとで、交雑の問題も起きている。北へ渡るのが遅れ、繁殖時期を日本で迎えてしまったために、土着のカルガモと混ざった渡り鳥も観察されるようになったのだ。

本来は生息しないはずの鳥も集まっている。訪れていた40代の女性は「ここ数年でユリカモメが増えた。エサを奪おうと、カモを襲っていることも多いです」と心配そうに話す。

都では来年3月末まで呼びかけを続けるが、「エサやりを楽しみにしている人も多い」とのことで、職員が遠ざかると再びエサをやり始める人もみられた。エサをもらっても、カモは本当のところ困っているのかもしれない。
この記事も、前述の記事と大差はないが
”カルガモとの交雑の問題”
が出て来た。
まず整理しておきたいのが、餌付けを受けやすい鳥とそうでない鳥がいることだ。
餌付けされやすい鳥は
オナガガモ、ハシビロガモ、ヒドリガモ、キンクロハジロ、ホシハジロ、ハクチョウ類、オオバン、ユリカモメ
中でもオナガガモが最も餌付けされやく、マガモ、カルガモ、コガモはほとんど餌付けされない。
餌付けの影響としての交雑を問題とするのならば、まずカルガモとオナガガモの交雑個体が珍しくないことを示さねばならない。
カモ類は比較的交雑がおきやすい種類であるが、カルガモとオナガガモの交雑個体は見たことがない。
私だけでなく、図鑑を執筆しているようなプロでさえ見たことがないと言う。
マガモとカルガモの交雑個体は通称マルガモという名で知られていて、これはさほど珍しいものではなく、私も紹介したことがある。
ただ、野生のマガモが親であるかどうかは定かではなく、アオクビアヒルの可能性も高い。
いずれにしても野鳥の餌付けとは直接関係がない話であって、ここで取り上げるのは筋違いである。

また、本来生息しないはずの鳥としてユリカモメが挙げられているが、先に書いたとおりこれはいて当然の鳥である。
カモと餌の取り合いぐらいするだろうし、それのどこが問題なのだろうか。

最後にスポーツニッポン 12月8日付
上野公園の「メタボ」ガモを救おう!
と題する記事
東京都台東区の観光名所である上野公園の不忍池に飛来するカモが、エサの食べ過ぎで“メタボリック化”し、生態系が崩れる原因になる可能性が危ぐされている。公園を管轄する都環境局は、8日から、来園客による野鳥へのエサやりを防止するキャンペーンを開始する。

不忍池にはオナガガモやキンクロハジロなど渡り鳥のカモが11月ごろから飛来。ここで越冬し、通常は2月下旬から3月にロシアなど北へと飛び立つ。しかし、都環境局によると、4月になっても居座るカモが近年見られるようになったという。

同局自然環境部の岩崎浩美係長によると、原因の1つが肥満。日常的にエサが過度に与えられていることに加え、来園客が増える年末年始は、さらに体重が増加。このため、カモが長時間飛べなくなったり、動きが鈍りネコなどの天敵に襲われ命を落としたりするケースも頻発している。

同局は来園客がカモなど野鳥にエサを与えることに対して、初めて防止を呼び掛けることを決めた。8日から16日までに集中キャンペーンを展開。同局職員や同園の鳥獣保護員が「エサやり防止」を喚起するチラシを来園客に配布し、園内放送でも呼び掛ける。法的に取り締まることは現在考えていないが、岩崎係長は「条例などをつくって取り締まることになる前に、来園客によく説明して理解してもらいたい」と話している。

渡り鳥のカモは日本の暑い夏には耐えられないため、夏まで居座ることになれば死に至ることもある。また、飛び立ったとしても重い体を支えられず、目的地にたどり着くまでに死んでしまう危険性を専門家は指摘。さらに、1年を通して不忍池で暮らすカルガモの繁殖に悪影響を与え、予期せぬ交配が起こりうる可能性もあるという。

動物愛護の観点から、これまで都は野鳥へのエサやりを防止するような活動は行ってこなかった。しかし、野鳥の死を招くことになれば本末転倒。岩崎係長は「(カモが)かわいいという気持ちはよく分かる。反発もあると思うが、とことんやっていきたい」とキャンペーンへ強い意志を示している。
この記事で面白いのは
>来園客が増える年末年始は、さらに体重が増加
という記述だ。
この公園では定期的にカモの体重を測定しているらしい。

>4月になっても居座るカモが近年見られるようになった。
4月にいるカモは珍しくも何ともない。
4月にカモを見たから「カモが渡りをやめた」という結論を出したのだろうか。
なお5月あたり、割と遅くまでいるのは、餌付けを受けないコガモが多いというのが私の認識だ。

>渡り鳥のカモは日本の暑い夏には耐えられないため、夏まで居座ることになれば死に至ることもある。
この一連の記事が真実なら、日本中で相当数のオナガガモが肥満のために渡れず、夏を越せずに死んでしまうという現象が観察されているはずである。
証拠もなしにこういうことを言う「専門家」とはどういう人なのか。

この記事でもカルガモとの予期せぬ交雑ということが言われているが、ぜひカルガモとオナガガモの交雑個体の写真を見せてほしい。

私は餌付けに関して積極的に支持するわけではく、全く問題がないとは思っていない。
餌付けをどうしてもやめさせたいのならば、その科学的根拠を示すべきだと極く常識的なことを言っているつもりだ。
東京都は何かほかの意図があるのではないか。

エサやり防止キャンペーンの胡散臭さ

前回、カモの餌付けに関する怪しげな新聞記事に関して書いたが、これだけではフェアでない気がしたので、しつこいようだがその続き。
というのは、新聞記事の元になった東京都の”エサやり防止キャンペーン”というのが、かなり科学的根拠を欠いている思われるからだ。
元を槍玉に挙げないのはおかしいと思うので再度取り上げる。
もちろん、お役所のキャンペーンを検証しないで報道するのはもとより問題である。






これは東京都環境局が配布しているチラシ。
東京都環境局のHPから、PDF形式でダウンロードしたものである。
思わず笑ってしまったのは、2枚目に出ているオナガガモの写真である。
私には普通の個体にしか思えないが、東京都環境局によれば「太りすぎでほとんど飛べない個体」なのだそうだ。
このカモがエサやりのせいで太ってしまった鳥であり、それが原因で実際に飛べない個体であるという検証はどこでなされたのか。

もし東京都環境局が言うように、エサやりのために太りすぎのカモが増加し、飛べなくなって渡りにも支障が出ているのであれば、もう少し科学的な検証が必要だろう。
例えば、餌付けされているグループと、されていないグループから相当数のサンプルを取り、その体重を比べる。
個体差とは言えない有意の差が見られれば、餌付けによって体重が増えたという仮定は成り立つかも知れない。
ただ、どれほど体重が増加すると飛べなくなるのかという検証も必要。
実際に渡りをしなくなった鳥がどの程度の割合いるのか、それは餌付けされた個体群に顕著に現れるのかという検証も必要。
気の毒だが、最終的には飛べなくなったカモは解剖して、人間が与えたエサの食べすぎであることを証明すべきだろう。
少なくともそれぐらいの科学的検証を経なければ証明したことにはならないと思う。
こんな1枚の写真だけで納得しろと言われても。。。



そもそもカモの場合、姿勢によってかなり太って見える傾向があり、このぐらいの写真はいくらでも見つけることができる。



これはカモでなくタシギだが、姿勢によってはこれぐらい見え方に違いが出る。
「健康なタシギとメタボなタシギ」とでもタイトルをつければ、鳥に詳しくない人はだまされてしまうかも知れない。

上から撮れば誇張されるので、先の写真は余計に太って見える。
意図的というより、ほとんど悪意が感じられる写真で、「とにかく太って見える写真を探して来い」という台詞まで聞こえるようだ。

私は前の記事にも書いたが、このようなエサやりを積極的に支持しているものではない。
むしろもう少し控えたほうがいいのでは、と考えている。
ドバトや、バリケン、アヒル類など本来野鳥でない種類が増えて、生態系を乱す一因になっているかも知れないからである。
しかしこういうことがきっかけになって、鳥が好きになってくれる子供もいるのであって、一概に否定ばかりするものではないと思う。
ただ、ほとんど根拠を欠いていると思われるキャンペーンが、公的な立場から強権的に行われることに非常に違和感を覚えるのである。

餌付け問題(怪しげな新聞記事に関連して)

餌付け問題などと、大それたことを書くつもりはない。
野鳥に対する「餌付け」に関しては色々な議論があるが、実は全く異なる2つの側面があるので、整理してみたい。

ひとつは撮影目的のための餌付けである。
珍鳥が現れると決まって餌付けが試みられる。それはカメラマンによって行われる。
殊更珍鳥でなくても、例えばカワセミの撮影目的のために餌付けをするカメラマンは大勢いる。
バードウォッチャーである我々はそのことにとても違和感を覚える。
もちろん我々もそのような餌付けの恩恵を受けていないわけではない。
珍鳥はやっぱり見たいし、撮影もしてみたい。
でも「餌付け派」のカメラマンには、「餌付けには元手がかかっているのだから勝手に撮るな」という手合いもいるのである。
「オレが餌付けしたおかげで見られたのだろう」と言われればその通りであるが、どう考えてもやっぱり違和感がある。
この「撮影目的餌付け」に対する考え方の違いが、バードウォッチャーと野鳥カメラマンの微妙な反発を生んでいるのは間違いない事実だと思う。
私はきっぱり「反対」である。

ふたつ目はカモ類やハクチョウ類などに対する冬鳥の餌付けである。
茨城県内でも霞ヶ浦や北浦で盛んに行われている。
この餌付けに対しては最近特に批判が多く、やめるべきだという意見が多い。
私はこの種の餌付けに対しては、特に賛成でも反対でもなく、適度に行われるのであれば特に問題視するものではないと考えている。
というのは、反対論の趣旨がかなり的をはずれているとしか思えないからだ。
曰く
「安易な餌付けによってカモ類が餌を自分で探す努力を怠り、生きる能力を失ってしまう。結果、渡りをやめて越冬地に留まる個体が増えてしまう」
というような論点なのだが、本当か?

こんなことを書く気になったのは、最近の新聞記事にこんなものがあった(らしい)からである。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2007120502069926.html

これははっきり言ってかなり怪しげな内容で、「留鳥であるオナガやカルガモ」という一文を見ても、野鳥に詳しい人が書いた記事とは到底思えない。
内容に関しても、ちゃんと裏づけを取った記事であるかどうかは大変疑わしい。
「こんな記事なら読者の関心を得やすいかな」と言った軽い感じで書かれた記事である疑いが強い。

私は餌付けによって太ったカモというものを見たことがない。
そもそも、カモの太り具合を判定するのは大変に難しい。
渡りが困難なほどに太ったカモが本当に不忍池にいるのか。
不忍池に限らず多くの餌付け場所を見ているが、夏になっても留まっているカモはごく少数である。
そのような個体が餌付けの影響であるかどうかはわからないし、餌付けが行われていない場所でも少数の越夏個体はいるものである。
あれほど餌付けされやすいオナガガモも、絶対に餌付けを受け付けないコガモも、全く同じ様に夏には姿を消すのである。
霞ヶ浦では、珍しく餌付けされているマガモの越夏個体が存在するが、それはケガによって飛べなくなった個体である。

この記事にある如く、訴えが殺到するほどユリカモメが悪さをしているという話は聞いたことがない。
霞ヶ浦でも餌付けされたユリカモメが盛んに活躍していることは、私のブログでもたびたび紹介している。
ここでのユリカモメの振る舞いが何らかのトラブルになったことは全くないし、餌付けに慣らされたユリカモメが越夏したことは一度もない。

思うに、三浦半島あたりでのトビの振る舞いがヒントになってこういう根拠のない記事になったのであろうということは想像がつくが、新聞記者であるならばもう少しまともな記事を書いたらどうかと思う。

氏原さんの以下の記事も参照ください。
http://ujimichi.exblog.jp/6534951/

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